漣は、寝たままの安西を彼のマンションまで送るように運転手に命じると、自らは車を降りて深夜の街を歩いた。
街灯の下を大きく深呼吸しながらゆっくりと歩いた。
気まぐれを装って、安西を翻弄しているように見せかけても実は自分があの若者に気持ちを奪われているからこそだと漣はとうに気づいていた一。
だからこそ、創立記念パーティーで秘蔵っ子の吉本レミを紹介したり自分を敬愛してくれている日下の気持ちを踏みにじってまでスタンフォード氏に会わせたりもした。
漣は自分の方からこれ程思いをかけた人間は今までいなかったと思った。
3人の妻だった女達、3人の子供達、自分が見いだした子飼いのスター達、多くの情を交わした女達や友人一数々の人々はいたが彼等より遥かに熱い思いを抱いていることに一。
パーティーで山口に指摘されるまでもなく、安西自身に揶揄されるまでもなかった。もう抜き難く戻り難い思いで彼を愛している自分がいるのを否応なしに感じていた。

つづく一
この物語はフィクションです。