「畜生!畜生!あのおべっか野郎!
社長にどう取り入ったかは知らないが、俺が一番楽しみにしていた事まで横取りしやがった!」
日下勇馬はありとあらゆる罵詈雑言をまくし立てた。
漣と共に、スタンフォード氏と会う若者を罵った。
「日下さん、それは社長が決めた事で安西さんの責任ではないわ。
彼は何も知らないはずよ。
社長があなたとの約束を破ってあの人を連れていったなんて」事務所のプライベートラウンジでやけ酒を煽る日下をひっそりと見守っていた如月夕子はたまりかねて声をかけた。
「夕子、おまえまであの野球野郎を庇うのか。本当なら社内トップの写真集の売り上げをあんな畑違いの野郎に奪われて。
夕子、おまえは悔しくないのかよ!」
「そんな事一」夕子は眉をひそめた。
日下と人目を忍ぶ仲になってから、この一見プレイボーイにしか見えない彼が実に義理がたく誠実な人間であるのをよく知っている。
暴行事件も見ず知らずの人間を暴漢から守ろうとして起こしてしまったものだった。
漣は日下の男気を認めて、干されていた彼を取り立て日本有数の若手俳優にしてくれた。
日下はそんな漣を恩人として敬愛し、師と慕っていた。
自分との事も真剣に考えてくれているのも、夕子はよく判っていた。
そして、スタンフォード氏と社長と3人で会見するのをどれ程楽しみにしていたかのかも。

つづく一

この物語はフィクションです。