いくら当代一の写真家だと祭り上げられても、所詮は何の組織にも属さないフリーの自分に比べ、日本一の出版部数を誇る漣文庫の社長であり高名な映画プロデューサーである漣とでは格が違い過ぎる。非力で小柄な自分に比べ、ヤクザを3人1人で叩き伏せた事もある漣。
いや、それより惹かれた者に向ける情熱そのものが雲泥の差だと木次は思う。被写体としての安西に惹かれながら薔薇の棘を見落とす自分の配慮の無さや不勉強による配慮のない言動一。それに対して、自ら門外不出と言った薔薇を惜しげもなく花束にして自ら棘を抜いて捧げる漣一。
役者が違い過ぎると木次には闘争心さえ湧いてこなかった。


木次は苦い酒を口に含みながら1年が過ぎた今もあの時の敗北感から抜け出せずにいる己れを感じていた。

第2章 終わり

この物語はフィクションです。