「スタークィンだよ。
僕はこの種類が一番好きでね」漣は、微笑みながら教えてくれた。
是非、1本欲しいと頼んだが漣はかぶりを振った。
「この薔薇は門外不出だ。
たとえどのような人間が現れようが、1本たりとも捧げはしない。
だから木次、悪いが他の薔薇にしてくれ」
そう言われて諦めた薔薇が一
何本あるのだろう。
とても大きな花束だった。
漣は花束を抱えている秘書の背後から姿を現した。
そして彼女から花束を受け取ると、驚いてこちらを見ている安西の許へと歩み寄った。
その日の安西は漆黒のコスチュームに身を包んでいた。
外国人並みのプロポーションの彼は、しなやかな黒豹を思わせた。
漣は花束を安西に微笑みながら手渡した。
安西は微笑み返して花束を受け取った。
「漣…さんですね。
漣文庫の社長で映画のプロデューサーでいらっしゃる一。
はじめまして。私は、安西一」安西が自己紹介するのを遮るようにして漣は口を開いた。
「安西貴之君だね。
今回は漣文庫の無理やりな頼みをきいてくれて本当にありがとう。
これはほんのお礼の気持ちだ。気に入ってくれると嬉しいのだが」
「ありがとうございます。
こんな立派な花束をいただけるなんて一」
「薔薇の棘は全部私が抜いておいたよ。
だから安心してくれたまえ」
「はい…」
安西は少し戸惑いながらも、薔薇の花束を抱え込んだ。

つづく一

この物語はフィクションです。