漣映画にとって如月夕子と共に2大看板スターである。
今や日本を代表する俳優といってもいいだろう。
特にアクション映画には数多く主演してその名を馳せていた。ボクサー映画の[暁の果て]やF1レース映画[幻の金字塔]などは50億円を越す大ヒット作になった。
そんな大スターも恩師漣の前では借りてきた猫の様に大人しかった。
[何だ?日下」[いえ、別に用事はありませんが一。
あの一」
日下はただ、漣の側に居たかった。
去年の秋まで、こうした席で漣の傍らにいたのは常に彼であり女優達だった。それなのに安西と知り合ってからは彼以外の誰も側に近づかせない様になってしまった。
日下にはそれが堪らなく寂しかったのだ。
[用がないならすまんが、女性客にドリンクサービスでもしてくれないか。
君にサービスされたら皆さんは大変喜ばれるからな」
そう言ったきり日下の方を振り向こうともしなかった。
「日下さん、気にすることはないわよ。
社長が安西さんと居られるのは秋から冬にかけての僅かな間だけですもの。
社長もそれをご存知だから、彼と居たいのよ。きっと」
自棄になって酒を煽る日下に、小柄な若い女性が声をかけてきた。
小麦色の肌にオレンジ色のドレスがよく似合う如月夕子だった。

つづく一

この物語はフィクションです。