「漣一」
「よう、木次。久し振りだな。どうした?
この頃ちっとも顔を見せないから心配していたんだぞ」
色白の口髭を蓄えた男に漣は嬉しそうに手を上げた。
木次大介一
漣と同年の44歳でW大の同期生である二人の付き合いは25年にも及ぶ。
漣の最も親しい友人の一人だ。安西と漣が交流を持つ切っ掛けを作ったのがこの男だった。
婦人科(女性)専門だった彼が初めて本格的に撮った男性が安西貴之だった。去年の暮れに撮影して、今年4月に発売された彼の写真集は抜群の売れ行きだった。
それまでプロ野球のBクラスチームのエースという存在にしか過ぎなかった彼を一挙にメジャーな地位へと引き上げた。
今まで野球選手の写真集がない訳ではなかったが、当然の事ながらチームとして試合や練習風景をバックにしたものだった。その常識を打ち破っていわゆるタレント仕様の写真集として売り出された。
映像の鬼才と言われる木次の手腕と安西の抜きん出たスター性が相まって素晴らしい売れ行きをみせたのだった。
更に撮影中に懇意になった漣の勧めで、CM出演した彼は一般の人々にも広く知れ渡った。
投手としての抜群の成績とも重なって非常な人気者になっていた。

つづく一

この物語はフィクションです。