ずっと昔の出来事です。
そんなに大した事ではないかもしれません。
でも、私には忘れられないものでした。
当時、私も子供が小学生くらいで若い主婦でした。
横断歩道にお母さん、年長さん位の男の子とその妹さんの親子連れ、中年女性、私が通りかかりました。
横断歩道の信号は赤でした。
それなのに、初老に近い小柄な女性は何のためらいもなくスタスタと横断歩道を渡って行くのです。
それを見た男の子が
「お母さん、信号が赤なのに渡っていいの?」と真顔で聞きました。
お母さんは困った顔をしましたが、何も言いませんでした。
かなりの大声なので、信号無視のおばさんの耳にも届いたかもしれません。
でも、おばさんはペースを乱す事なく渡り続けます。
「信号赤だから渡っちゃ行けないんだよ~!」
男の子はそう悲しげに言うと何故か、私をじっと見つめてきました。
私は、信号無視は普段からしない者なのですが男の子に見つめられてちょっと焦ってしまいました。
おばさんはどこ吹く風の様子で信号を渡りきってしまいました。
男の子の目にどう写ろうとどうでもいいようでした。
やがて信号は青になり、私達は信号を渡りました。
たったそれだけの事でしたが、あの男の子の悲しげな眼差しが今でも、忘れられません。
私は、子供は社会から色々な刺激を吸収して成長してゆくのだと思います。
大人は子供が毎日吸い取り紙が水分を吸収していくようにしてゆく経験という水分をなるたけ汚さないようにしてゆく義務があると思うのです。
かといって、私はあのおばさんを引っ張って元の道に引き戻す事は出来ませんでした。
でも一緒になって信号無視はしなかったから、それだけは、まだ良かったかなと思っています。
もし、私まで信号無視をしていたらあの男の子は一時的にせよ大人不信に陥ったかもしれません。
感受性の強そうなつぶらな瞳の男の子の心を私は少しは傷つけずにすんだかなと思います。
世の中、ルールを守る守らない以前に純粋な心を傷つけずに見守っていく心も必要だと思う日々であります。それではまた。