そんな馬鹿な―そんな事はあり得ない。
神界において、神界の王たる最高神を従神に据え置く程の存在―絶対神。
その存在は勿論サナヤも知っている。
神々の中の神。バハラードの頂点の神。
絶対神…。
しかし、その真の姿は誰も知らず全てが謎の存在であり、神界においても唯一伝説の神とされている。
実在しないと断言する神も少なくなかった。
その時、サナヤは気付いた。
自分自身が絶対神の御名を知らなかったその事に―。
バハラードの神々はその名を知りながら口にする事を許されぬとされる。
絶対神が顕れてその名を口にするまでは決して口にするのは叶わない。
その名をサナヤは知らなかった?いや、違う、違うのだ。
今、サナヤははっきりと思い出した。
人界の喫茶店で起こった出来事を―。
サナヤは、マカゲの前で神として降臨した時にこう言った。

『私の名前は
早奈谷高樹。
いや違う―。
私の名前は、
マナイ…マナイだ。
だが、その名は禁じられている。』
あの時は、まだ従神としてしか降臨していなかった。
だからこそ、その御名を名乗りながら自ら封じていたのだ。

(私は…。
わ、私はぁ~。)
サナヤは、頭を抱えて倒れこんだ。