しかし、それからが大変だった。
クヌギが無事に戻って来た安堵感で気が緩んだせいもあっただろう。
サナヤは、高熱を発して寝込んでしまった。
如何に究極の癒しの術を持つサナヤといえど、闇蓬来から受けた傷は深く、マカゲは付ききりで治療を施した。
クヌギは防御術には長けていても癒しの術は使えないので、傍らで見守るしかなかった。
そこで役に立ったのが音瀬の民だった。
彼等は、マカゲの治癒能力を模倣してサナヤに癒しの術を共にかけた。
音瀬の民達の中には能力者の力を同等に使いこなせる所謂(いわゆる)依り代(よりしろ)的な力を持つ者がいた。
お陰でサナヤの治療は、大いにはかどった。
マカゲは、治療呪文を声高に唱えた。
「この者、マナイの深き傷を我が力をもって癒したまえ。」

マカゲがそう唱えたのを聞いて、クヌギの顔色が変わった。

「マカゲさん、その名は!?」

「サナヤの本名だ。人界で1度だけそう名乗った。
俺と4年振りに会った時にな。降臨したての時に自分の名前はサナヤではない、マナイだと言った。
こんな時だ。
本名を用いなくては、な。」

「…。」

クヌギは信じられないという面持ちでサナヤを見つめた。

「絶対…神。」

やがて、その言葉がクヌギの口をついて出た。
―つづく。