¨ミー!ミー!¨

ずっと彼等を見守っていた音瀬の民も喜びの声をあげた。
サナヤは、クヌギの体をしっかりと抱き締めた。

「良かった!
良かった!
クヌギ―ッ!」

少しの間、呆然としていたクヌギもやがてサナヤの背に手を回して抱き合って号泣した。

暫しの時が流れた。
クヌギはサナヤの背中の傷を見て、彼の苦しみと自分への思いの深さを悟り、己の身勝手を詫びた。

そして、クヌギはマカゲの前に進み出た。
深々と頭を垂れて三界(さんかい)の礼を捧げた。

「よせよ、こっぱずかしいじゃねえか。」

マカゲは、照れてどぎまぎした。
音瀬の長と民もマカゲにすりよって来た。彼等にとって最大の礼は体に触れて擦る事なので、マカゲはくすぐったい思いをする羽目になった。

「ウッヒャ、ヒャ。
やめて、お願い。マジでくすぐってぇ。
腹の皮が破れちまうよ。」

それでもチョコチョコとすりよって来る音瀬の民の¨攻撃¨にマカゲはすっとんきょうな声をあげて逃げた。
その姿がとても滑稽でサナヤとクヌギも顔を見合わせて笑った。
それは、音瀬界へ来てからの初めての笑いだった。
これからの行く末も見えないままに、それでも3人と音瀬の先住民達はほんのひとときを明るい気持ちで過ごせたのだった。