がむしゃらに突進しようとしたマカゲの背後に凄まじい念波動が発露した。
その¨念¨は、彼を仕留めようとした闇蓬来の黒い波動を一瞬で飛散させた。
マカゲは、驚いて振り向いた。

「クヌギ!」

たった今まで、身動ぎもせずにベッドに横たわっていた若者が、マカゲの斜め背後の空中に浮遊していた。
左腕を捻る様に突き出した姿で―。
元々、クヌギの真の利き腕は左だった。
左手は、クヌギの秘めた能力を最大限に発動させる。
最高神が最初から左で攻撃する姿をマカゲは初めて見た。

(クヌギ…。
お前―。)

そして、更に彼を驚かせたのはクヌギの表情だった。
クヌギの顔付きはベッドに横たわっていた時と寸分も変わっていなかった。
木偶(でく)人形の様に無表情だった。
いつも憎まれ口を叩きながら、生き生きと戦っていた最高神とは別人だった。
クヌギは、虚ろな目をマカゲに向けた。
差し出した左腕に右手を軽く添えて呪文を唱える。

「蛇防御!」

あの女闇蓬来のキリコにもかけた究極の防御術だ。
一瞬で蛇の精が具現化して、仄かに白いベールに変化した。
ベールは、マカゲの体を優しく包むと、青色に変色して彼の体はシールドに守られた。この術をかけられた者は、自身が攻撃出来なくなるが、その代わりにすべての攻撃から守られる。