音瀬(おんぜ)界とは、本来形を持たない世界だと真影は説明した。

自分は人界では只の人に過ぎなかったが、
遠い昔―当時の今上最高神によってこの音瀬で生を受け、この世界の知識と理そして記憶を植え付けられた者だと。
空世を介して人界に転生したが自身の根源は、この世界にあるのだと彼は語った。

「そんな事が―あり得るのですが?」

早奈谷は、信じられないという面持ちで真影を周囲を見渡した。
3人は、洞窟を出て真影が創り出した空間に座って話し合っていた。
まさに、何も無い―。
全体的にモノクロームというより、灰色を基調にした白黒テレビの様な色の無い世界。
真影はそこに8畳程の部屋状の空間を造り、簡易なテーブルと3人分の椅子を設えた。
2人に座るように促す。

「すまんな、俺もまだ慣れていないから、ここを形造るだけで精一杯なんだ。
暫くは我慢して欲しい。」

その言葉に早奈谷は顔色を変えた。

「貴方は、この世界そのものを構築なさっているのですか。」

「お前さんの術に似ているかもしれないが、この世界の音の振動を基調に俺の発する気と融合して物体や自然が創造されるみたいだ。
詳しい所は、俺にも判らないのだが。」