暗闇の中で早奈谷は術をかけようとした。
だが、すぐに絶望的な念を発した。
¨駄目です。
明かりがつかない。
こ、ここは人界ではありません。
術がかけられない!」

¨何だって!」

事態は2人が想定していたより、ずっと深刻だった。
すぐに明かりがつけられるという目論見が外れて、早奈谷は激しく動揺した。
¨ここは、一体どこなのか!?
ああ、判らない。私には、さっぱり判らない。¨
早奈谷の動揺が真影に直に伝わって来た。

¨落ち着け!
早奈谷。
お前達、意外と打たれ弱いな。
特に術や技かかけられないと判るとな―。¨

真影は、檪がやくざに殴り込みをかけた時の事を思い出した。
肩を撃たれた檪が激しく動揺して、

『畜生!
痛くて集中出来ない。
術が出て来ない!』

そう叫んでいた時と今の早奈谷はそっくりだった。

(それにしても、俺は―。)

いつもなら真っ先に恐怖におののくはずなのに、妙に落ち着いているのが自分でも不気味だった。

その時、雷鳴が轟いた。
異様な金属音と悲鳴が交錯して聞こえて来た。
稲光が前方から垣間見えた。

¨檪か?¨

真影が念を送っても反応しなかった。