いつの間にやら、2人は結界の地に大の字になってひっくり返っていた。
激しく喘ぎながら、長は言った。

「やるな―。
その細い体で呆れたものだ。」

「あんたも、俺の卑怯技にもめげず、燃えてたな。」

檪は、心底痛快だった。
子供の頃は典型的ないじめられっ子だったが、本当は人一倍の闘争本能をその内部に秘めていたのだ。
久々に素手で喧嘩をして、傷だらけになっても檪は満足だった。
そして、この宿敵であるはずの闇蓬来の長に妙な親しみさえ感じた。

しかし―
先に起き上がった長が突然、
絶叫して顔を押さえた。

「おい、どうした?」

檪は驚いて声をかけた。
「長く―居すぎた。
仮面がもた…ん。」
長の両手の隙間から、肉の焦げる臭いと煙が立ち上った。
そして、檪が垣間見た長の素顔は―、
思わず顔を背けてしまう凄まじさだった。
顔全体にフジツボ状のものが張り付き、目鼻の区別もつかない程に所々がえぐれ、ひきつれていた。

「長…。
お前―。」

それきり絶句する檪に凄まじい憎悪の念を送り、長は早奈谷の結界を破ると姿をくらませた。
―つづく。
この物語はフィクションです。