苔桃の木の葉が生い茂る広い道から、一本外れた裏道を真影は散歩のコースにしていた。
そこは地元民にも穴場で、訪れる人は殆どいない。
しかし、その日は違っていた。
その小道を少し行った所で、真影は大の字になって横たわる男性を発見した。
年の頃は50代半ばか。その中年のおじさんの顔を見て彼は叫んだ。
「ヒェェ~ッ。
重根さん!」

檪の売り出しに夢中になっていた敏腕プロデューサーの重根大悟
(かさねだいご)だった。
極めて傲慢で、気に入らない者にはとことん冷たく、天下の悪人面を持つこの男に真影は俳優時代によく絡まれた。
はっきり言って大嫌いな男だった。
(何でこの人、こんな所でひっくり返っているんだよ。)
そう考えて思い当たる事があった。
彼は、女好きで人界各地に愛人を囲っていると噂されている。
女性への愛は、あまねく平等にをモットー(?)にしている彼は、ずっと独身で旅先で泊まるのは愛人宅と豪語しているそうだ。
真偽のほどはともかく、伊來に別荘を所有しているのを真影は思い出した。