早奈谷の様子がおかしくなってから、まだ30分と経っていない。腕時計は、9時25分を指している。一体、何が起こったのか。常識ではあり得ない出来事が現実に起こっている。
「真影さんは、ここにいらして下さい。」
早奈谷は1人で行動するつもりだ。
「いやだーっ!置いて行くな。俺も行く。絶対についていくぞ。」
こんな訳の判らない状況でおいてけぼりをくってたまるか!
真影は早奈谷にむしゃぶりついて離れようとはしなかった。
「真影さん…。」
仕方なく、早奈谷は彼の同行を許した。

ここは、荘厳園の駐車場の一角ー。
殆ど一瞬で東亜からここへ移動したというのかー。
早奈谷に問い質している暇はない。
彼は忍び足ながらかなりの速さで荘厳園の事務所らしき建物に歩みを進めた。
明かりがついた一室に、広報担当者、若い僧、檪のマネージャーまでがいて何事か話していた。
「ーったく。
何年もあの傲慢な重根の下で媚びを売ってさあ。うまい具合にあの子のマネージャーになってこの仕事を持ち込んで、本当に大変だったのよ。」
「いや―。ご苦労様でした。」
広報担当者は、酒をあおりながら、実は荘厳園の回し者だったマネージャーの労をねぎらった。