もしかして、この人お化け?
自分、食べられる?
不味いと思うけどー。
あまり脂がのってないよー。
どこかにまるでこの出来事を全くの余所事(よそごと)にしている自分がいるー。
それ程、目の前に繰り広げられている光景は現実離れしていた。
「諦めたか。逆らいもせず、素直に食らわれるか。良い子じゃ。」
僧侶が檪の肩に手を掛けた。


ドクン、ドクンー。脈打つ音が体内を駆け巡った。一瞬、早奈谷の姿が脳裏をよぎった。
どうして?
何故、突然彼の姿がが頭に浮かぶ?


その時、檪の頭に直接語りかける者がいた。
ーあれなるは、そなたの従者である。
即ち、従神(じゅうしん)。
(従神?何?
意味が判らない。)
ーそなたは、空世を通じて神界より遣われし神、神界の王なり。
(王?
ああ、そういえば重根先生が、お前は芸能界の帝王になれっていつも言ってるけど。
違うの?
どういう意味?)

その時、薄ぼんやりとしていた視界がはっきりと開けた。
頭の淀みが晴れてすっきりとした。