「私(わたくし)は人界に修行に出てまだ日も浅いのでありますが…。」
テラスで二人は対面で語り合っていた。
「つくづく人界というものの全てに失望を禁じ得ません。
私は人界の学校という区域を修行の場として選択しました。そこで教師という生業を得て、日々精進に励んでおります。
幼子らとの交流には心響くものがあります。
しかしながら、子らを守り指導するべき立場の親、周囲の人々、私の同僚ーこの度は私一人がその地に派遣されました故、神の仲間はおりません。彼等全てがあまりにも己の利己にのみ忠実で毎日が争いの為の争いに明け暮れているのです。
何故、神界のごとく揺るぎなき平穏な日々を彼等は思い描こうとしないのでしょう。
徳を積めば、神界への道も開こうというものですのにー。」
そこまで言って若き神は何事かに気付き、最高神に詫びた。
「お許し下さい。今上最高神様は人界よりお顕れあそばしたのに、つい失念しておりました。」
最高神は構わない、と首を振り微笑んだ。
「私への気遣いは無用です。
遥か古(いにしえ)の事となりますが、人界での短い日々は良き思い出ばかりが残っています。」