わたし
「やあ、マイケル、よく来たな! 明日は、あの山へ連れてってやるよ!」
「ちょっと風が強いけど、な~に、わたしが一緒なら心配ないさ!」
(フフフ、小僧め! いっちょ揉んでやるぞい…)
マイケル
「ジョニーおじさん、こんにちわ。」
「おじさんの噂は、ロジャー爺さんからいつも聞いてるよ!」
(全然、頼りにならないって…)
一晩中、吹き荒れていた風は、朝になっても収まりません!
どうしたもんかと、朝飯を食って考えていると、辺りのガスが晴れてきましたよ!
でも、風が強いので、ここは下山が無難な選択ですね。
年配のご夫婦がおっしゃります。
「わたし達は降りるつもりなのですが、あなたは赤岳へ行くのですか?」
「ふっ、もちろんですよ!」
「でも危険なので、皆さんは下山するのが正解だと思います!」
なにやら、勢いで小屋を飛び出したわたしを、小屋番の兄さんが見送ります。
「お気をつけて~」
(いま、「ばかじゃね」って、言わなかった?)
さて、赤岳へ向かうキレット越えのルート、
まずは、権現名物、61段、高さ20mの源治ばしごを降りますよ。
さあ!マイケル、行くぞ! わたしについてくるんだ!
(ギャー!! 下を見なけりゃよかった…)
「マイケル、風が強い! 三点確保で降りるんだぞ!」
(わたしも、泣きながら降ります…)
待ってろ、赤岳! 今いくぞ!
(鞍部の樹林帯では、色づいたナナカマドの実が、静かにわたしを迎えてくれます…)
しか~し、稜線に出ると、吹き付ける風の強さは、半端ではありません。
わたしは、きりきり舞いになりながら、のろのろと進むのでした。
キレット小屋の建つ最低暗部を越え、ここのガレ場を登りきると、頂上直下の岩場に至ります。
(でも、帰りには、また降りるんだよ…)
そして、そこは本日一番の暴風ワールドだったのじゃ!
あんまり凄いので、写真撮る余裕はありませんでした…
(ていうか、撮っても風は写らん…)
で、なんとか登頂です…
(いつものごとく、調子に乗ってます! しかも、真っ青な空が恨めしい…)
北には、横岳~硫黄岳が見渡せますよ!
赤岳へは東西南北いろんなルートがありまして、その後、強い風の中、みんなどんどこ登ってきます。
今日は、一年で最も混む日なのですよ!
頂上も風が強いので、休憩もそこそこに戻ることとしました。
ちなみに、キレットを往復しようという人は、あんまり聞いたことがありません。
(かったるいという意味で…)
「ちきしょう! 車さえ停めてなければ…、 せっかく登ったのに…」
ぶつぶつ文句を垂れながら、キレット鞍部まで、再び4~500mほど降ります。
左奥には、これから戻る権現岳の双耳峰。手前の鎖場トラバースは、本日の核心部?
振り返れば、赤岳から歩いてきた稜線が、何事もなかったかのようにわたしを見送ります。
(何事もなかったんだけどね…)
そして、すっかり忘れていましたが、
降りたものは、また登らねばならんのです!!
(フンギャ~!!)
「お願いだから、風やんで…」
わたしは、泣きながら梯子にしがみつくのでした…
で、権現を越えて1時間ほど、本日の宿、青年小屋に到着です。
ここは、風も無く平和な世界…

辛いことは、すぐ忘れます!
明日登る予定の編笠山を見上げながら、ウイスキーのお湯割で、いい気持ちじゃ!
(今日、登れよ…)
行動時間
初日 5時間ちょっと
2日目 6時間ほどでした。
(富士山を見ると撮らずにいられないのが、おやじの「さが」…)
(涙の下山編へとつづく…)
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