■ 今日のユダヤ人には大きく2種類あるいは3種類がある。日本人のわれわれはこの相違がよくわかっていない。

 ひとつは「スファラディ」(スファルディ)のユダヤ人で、旧約聖書にアブラハム、イサク、ヤコブの子孫として歴史に登場する「モーセの民」である。スペインを意味するヘブライ語「スファラッド」を語源とする。
 これがふつうは“本来のユダヤ人”だとみなされている。しかし、かれらは数度にわたるディアスポラ(離散)にあって、1492年までは主としてイベリア半島に定住していた。ここでかれらはスペイン語を改竄した「ラディノ語」をつくる。が、イスパニアでカトリックの力が強くなると(いわゆるレコンキスタ)、主要部族は北アフリカ、オランダ、フランス南部に移動した。
 この移動部隊の多くはキリスト教徒と融合しながら生き延びた。この部隊の“隠れユダヤ人”たちが「マラーノ」である。スピノザやレンブラントはポルトガル系のマラーノの直系だった。

 もうひとつは「アシュケナージ」のユダヤ人で、その多くは東ヨーロッパで多数のコミュニティをつくっていたのだが、ロシアのポグロムやドイツのホロコーストで迫害され、西ヨーロッパあるいはアメリカに移住した。
 アシュケナージとは、ドイツを意味するヘブライ語の「アシュケナズ」から派生した呼称である。
 このアシュケナージはもともとはカザール人と重なっていた。かれらはやがて東欧に動いてドイツ語を改竄して「イディッシュ語」をつくった。
 いま、世界中のユダヤ人は1500万人ほどいるというが、そのうちの約90パーセントはアシュケナージだといわれる。しかし、アシュケナージは本来のユダヤ人なのかという問題がある。

 さらに「ミズラヒ」と呼ばれるユダヤ人がいる。しばしばスファラディに含まれて語られることも多いのだが、その一部がアジアに流れていったことに特徴がある。もっとも今日のイスラエルにはスファラディとミズラヒがほぼ半分すづ居住する。