2005年に起きた「千葉県北西部地震」は、震源が(wikipediaの緯度・経度を地図に落としてみると)東京湾北縁の北東角の少し内陸部の辺りになります。また震源の深さは73km、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で起きた海溝型の地震ようです。
 私は「海溝型地震」というと、日本海溝(太平洋プレート)や南海トラフ・相模トラフ(フィリピン海プレート)など、プレートが沈み込むところで起こるものだと思いっていました。
しかし、内陸部の直下でも「海溝型地震」は起こっているようです。
 またこの境界は関東フラグメント沿いのものではないかとも言われています。関東フラグメント仮説というのは、太平洋プレートの海嶺が沈み込めずに破断し、プレートの断片が太平洋プレートとフィリピン海プレートの間に挟まっているというものです。
参考:関東フラグメント境界での地震多発についての図
 また上記震源は東京北縁断層(活断層ではないと評価(地震調査推進本部))の南東側の起点にも近いです。
 なお「千葉北西部地震」は周期的に起こっており、安政江戸地震もこのタイプのものではないかとも言われています。
2005年の地震のマグニチュードは6ですが、足立区で震度5強を記録しています。千葉県が想定するマグニチュードは7.3、東京も「安政江戸地震」並みの被害がでる可能性があります。
 さらに周期1~2秒のパルス波の発生が予想されるとのことです。これは「キラーパレス」と言われ、阪神淡路大震災でRC建物に甚大な被害をもたらした原因ではないかとみられています。
 参考:住宅を破壊するキラーパレス
 参考:「マンションは地震に強かった」という誤解
 なお上記「安政江戸地震」の被害と地盤の関係については以下を参照ください。
参考:江戸・東京を襲った巨大地震の大被害地域と現代の再開発地域との関連性

 関東平野の直下に太平洋プレート、関東フラグメント(仮説)、フィリピン海プレートが沈み込んでおり、相当複雑な状況になっています。そしてこの頃、このプレート(特に関東フラグメントとフィリピン海プレート)は結構脆く、あちこちで破断などしているのではないかと思うようになりました。
 フィリピン海プレートは伊豆半島の衝突で断裂し(伊豆半島では破砕帯になっている)、駿河トラフ側と相模トラフ側から沈み込んでいます。相模トラフから沈み込むプレートの上面深度は変形しており、南東側に湾曲しています(南東側が沈み込み難くなっている)。これは関東フラグメントが影響しているのか、断裂による影響なのか分かりませんが、これだけ変形すれば脆くなっているのではないでしょうか?
 フィリピン海プレート内部にも震源があると言われても、今まではプレート境界以外はピンときませんでしたが、今ではよくわかるようになりました。
 なお関東平野にも中央構造線が通っており、その影響を考えることも必要なようです。
 
 それにしても、この「千葉県北西部地震」のメカニズム・被害予想の研究については、東京の防災を考える上でも最重要のものだと思われます。 特にキラーパルス発生に対する対策を真剣に考えるべきだと思います。

参考清水建設「1855年」の安政江戸地震の震度分布を再現
清水建設は、825日、「1855年安政江戸地震」の震源モデルと地震動を推定し、千葉県北西部のフィリピン海プレート内の深さ60キロメートル付近に震源を設定することで、歴史資料に基づく震度分布を再現することができたことを発表した。」
1855年安政江戸地震」は、マグニチュード7前後、都心部での最大震度6強、首都直下地震の中で最大被害をもたらした首都直下地震といわれ、その震動特性を解明することは、東京での地震対策の立案や首都圏の超高層建物等の設計用地震動を策定する上で重要と位置付けられてきたという。」
今回の研究では、まず、2005723日に発生した千葉県北西部地震の震度分布が、異常震域を示す安政江戸地震の震度分布と類似していることが判明した。
 次に、2カ所の強震動生成域を含む震源モデルを設定した後、震源位置と強震動生成域の設定条件を変えながら、「経験的グリーン関数法」に基づいて、千葉県北西部地震の観測記録から大地震の強震動を予測。
 強震動予測と震度分析を繰り返した結果、安政江戸地震の震度分布を再現する「最適震源モデル」を見出したという。」
このモデルによる推定地震動は、速度波形に周期12秒のパルス波が見受けられた。この数値は、中低層の建物に与える影響が大きいとされることから、推定地震動は、安政江戸地震の再来を想定した地震対策にもつながるとしている。
なお、同社は、今後、この研究成果を、超高層住宅の生活継続プランの研究に利用してもらうとともに、都心部での超高層建物等の耐震設計に反映していく考えだ。(引用終わり)」

参考:千葉県、北西部直下地震の被害想定大幅引き下げ(日本経済新聞)
千葉県は14日、県北西部で発生を予想する直下地震の経済被害額について、従来想定に比べて6割近く少ない4兆1千億円に引き下げる方針を明らかにした。死者数も約930人と従来の半数以下に抑える。建物や住宅の耐震化、住民の防災訓練への参加率引き上げなど減災への取り組みを強化することで、地震被害の拡大を防ぐ。
 国が首都直下地震を想定しているのと同様に、県は千葉市と習志野市の境界付近を震源とする「千葉県北西部直下地震」が将来発生すると想定。予想される地震の規模はマグニチュード7.3。従来の被害想定は、建物や住宅の消失による経済被害額を9兆6500億円、圧死や焼死などの死者数を約2100人と見積もっていた。
 近く「千葉県地震防災戦略」を8年ぶりに改定し、減災に向けた取り組みを強化する。住宅の耐震補強を後押しし、201726年度の10年間で耐震化率を84%から95%に引き上げる。災害対応の拠点となる病院や自治体庁舎の耐震化率も92%から95%に高める目標を設けた。
 県防災政策課の担当者は「死者や経済被害の拡大を抑えるには、建物の倒壊や延焼を防ぐことが最大のポイントとなる」と指摘。市町村と連携して災害時の応援受け入れ体制を整えるなど、予防と初動対応の両面で対策を強化する。(引用終わり)」
参考:千葉北西部地震                                                           https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E5%8C%97%E8%A5%BF%E9%83%A8%E5%9C%B0%E9%9C%87
千葉県北西部地震(ちばけんほくせいぶじしん)は2005年平成17年)7月23日)午後4時35分に千葉県北西部(北緯35度34.9分、東経140度8.3分[2]千葉市付近直下を震源として発生した地震である。
震源の深さは73km、地震の規模はM6.0(Mw6.0)。東京都足立区伊興震度5強を観測したほか、北は青森県、西は兵庫県までの広い範囲で揺れが観測された。東京都区内で震度5以上が観測されたのは1992年平成4年)の東京湾を震源とする地震以来13年ぶりである。」
千葉市付近直下の北緯35度34.9分、東経140度8.3分、深さ73kmを震源として発生した地震。メカニズムは東西方向に圧縮軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で起きた海溝型地震である[1]。震源の周辺では1928年5月21日にM6.2、1956年9月30日にM6.3、1980年9月25日にM6.1(死者1名)と周期的に同規模の地震が発生しており、約25年間隔での発生の可能性が示唆されている。(引用終わり)」

参考:関東フラグメント

仮説によれば、関東フラグメントはおよそ200〜300万年前に太平洋プレート上の海嶺がプレートの下に沈みこもうとした際に、抵抗が増大して太平洋プレートが破断して生じたプレートの断片とされる。関東直下の栃木県南部から神奈川県北部までの地域の深さ30〜100km付近に、厚さ25km、100km四方にわたって存在している。現在は太平洋プレートがこの断片の下にさらに沈みこもうとしており、関東直下は4層のプレート構造を成していることになる。」
プレート境界が多いため、このような地域の直下では地震が頻発すると説明されている。さらに、このプレート断片は陸化した地域の直下にあるが下部にプレート境界が存在するため、比較的規模の大きいプレート間地震(海溝型地震)が直下型地震として発生することになる。仮説では、1855年安政江戸地震もこのタイプの地震だったと推定している。今後懸念される首都直下地震が、このようなタイプの地震として発生する可能性が指摘されている。(引用終わり)」

参考:新島地質学研究所
「7.6関東平野下の地震密集域と空白域

関東地方の震源は,平野部に多く,中央構造線以北と関東山地では急減する(図227).関東平野域の初動発震機構解震央分布には,地震のない震源空白域と震央間距離が10km以内に集中する震源密集域がある.
最大の空白域は「成田」で,その西方に「所沢」,中央構造線の北側には「茂木」・「鹿島灘」の空白域がある(図233).茂木と鹿島灘の空白域は東北日本弧と関東地方の境界(図227)に当たる.
 空白域の間を埋める密集域は西北西-東南東方向の中央構造線沿および南北方向に並んでいる(図234).中央構造線沿いの密集域を,西から「五霞」・「佐原」・「飯岡」・「銚子」・「鹿島沖」・「銚子沖」と名付ける(図234左).「五霞」から南北に並ぶ密集域を北から,「下館」・「下妻」・「五霞」・「千葉」と名付ける.また,南北列の西側の密集域に北から「岩槻」・「東京」・「丹沢」と名付け,東側の密集域に北から「茂原」・「南総」と名付ける.これらの密集域では逆断層p型震源(赤色)が優勢である.
 五霞・下館・下妻・佐原・飯岡・鹿島沖・銚子・銚子沖の密集域が中央構造線沿密集帯(図227)を構成している.
相模トラフ軸の石堂小円の海溝距離断面図では(図234右上),相模トラフからの同心円状屈曲によって算出された関東スラブ上面以深に主要震源密集域が位置している.算出関東スラブ上面には,茂原・佐原・銚子沖・五霞.下妻の密集域が並んでいる.このように密集域が並ぶことは,算出関東スラブ上面が関東スラブとマントルとの力学に関係しているからであろう.(引用終わり)」


参考:4.1 プレートテクトニクス (防災科学研究所)
この中に「太平洋プレートとフィリピン海プレートの上面等深図」があります。