さて「地震と地震動」について『安全な建物とは何か』神田順著 技術評論社から引用します。この本はたいへん分かりやすく解説していて、新耐震のイメージもやっと理解できたように思います。

 「…”地震”そのものと、地震によって地面をどう揺らすかを表す”地震動”を区別しなければなりません。

 地震の大きさはマグニュチュードで表します。断層面積が大きかったり、滑った量が大きいと、断層運動全体から放出されるエネルギーは大きくなり、マグニチュードも大きくなります。一方、地震動は、ある特定の地点の地面の揺れを表します。わかりやすい量は加速度です。それを時間で積分した速度や、さらに時間で積分した変位で表すことも可能ですが、変位が大きくても、ゆっくりした揺れでは、建物は揺れないので、加速度を目安にすることが多いのです。

 さて気象庁で発表する震度は、おおむねこの加速度を換算して定めています。正確には加速度の対数に比例した尺度になっています。たとえば、25ガルから80ガルが震度4、80ガルから250ガルが震度5、400ガルまでが震度6で、それ以上は震度7という具合の数字が対応するとされていましたが、最近は、やや複雑な解釈がされ、直接加速度値とは対応しないようになりました。

 揺れには周期があります。ゆっくりした揺れもあれば、小刻みな揺れもあります。それを専門的にはスペクトル特性と呼んでいます。…地震動のスペクトルは、固定周期をもった振り子の応答の大きさで表します。周期はだいたい0.1秒くらいから10秒くらいまでを対象としています。

 今までの耐震設計で世界中でもっと有名で、もっともよく使われてきた地震動が、1940年にアメリカのカリフォルニア州で発生したインペリアルバレー地震のときに記録されたエルセントロ1940Nというものです。もう一つ… 兵庫県南部地震のときの神戸海洋気象台での観測記録です。

 (地震波は)横軸が時間になっています。それぞれ、地震の規模は、マグニチュード7.1とマグニチュード7.2です。一般に地震規模が大きいということは、断層の面積も大きくて、いつもでも揺れが続くので、地震動の継続時間が長くなります。…兵庫県南部地震による地震動の継続時間はそれほど長くなく、大きな揺れは、記録からみてもほとんど一撃という感じです。キラーパルスと呼ばれたりもしました。

 それでも非常に破壊力があったは、その揺れの卓越周期が1~2秒と、建物にとって条件の厳しいものだったことによります。

 ※卓越周期…地震動は、地盤で増幅されるときにその特性を反映して、特定の周期成分が卓越することがあります。そのような周期を卓越周期といいます。また地震断層の特性や深い地盤構造さらには液状化などによっても卓越周期が認められることもあります。

 …建物にとって注意すべきは地震というより地震動です。大きな規模の地震でも遠くで発生すれば、揺れはそれほど強くありません。逆に兵庫県南部地震にように、都市の直下で起きると、マグニチュードはそれほど大きくなくても、強烈な揺れとなる場合があります。そして、地震動の強さは、最大加速度で目安を測りますが、被害を起こすかどうかは、さらにスペクトル特性や継続時間がも問題になります。(引用終わり)」

<変位した断層の規模によりエネルギーの大きさが決まるようです。位置エネルギーが運動エネルギーに変わって衝撃波として伝わるということでしょうか。その波は地盤特性により増幅されたり、特定の周期成分に収束するとのことです。

 寒天のような地盤に衝撃波が伝わり、ぷよぷよ震動するようなイメージでしょうか。その上に建物があると、震動が伝わり建物の固有の周期成分に干渉して揺れるということだと思います。

 建物の固有の周期成分やその下の地盤の特性などもよく考慮すべきというこでしょうか?>