押し迫ったこの日に、いよいよ内輪の忘年会。



内輪だからね。



気軽に楽に気を使わずにさらりと。



ほんのちょろっとね、楽しく呑めれば良いから。



だって、皆いい加減疲れたわよね、もう。



なんてことを思っていたら、Mちゃんがド紫の着物で現れた。



一同、うごっ!と声にならない悲鳴。



わ、和服かよーーっ!てなわけで、皆ひっくり返るほどビックリした。



昨年は金髪のかつらを被って来ましたからね、この人は。



外人か?と思って道行く人が振り返っていたが、本物の外人さんまで振り返って見ていたのは異常におかしかった。。



しかし、違和感は違和感としてあるのだけど、金髪も和服もどちらもお似合いで可愛かった。この人は違和感を味方につける天才だと思う。内輪だけの忘年会でここまで発揮して下さってありがとう。



「やー、毎年見せてくれますね。」と言った私の夫は「そっちも何か出せ。」と怒られてた。





療養型に行ってから皆と全然会えなかったせいか、実に懐かしかった。夕方から8時間も呑んでいたと言う。主婦よ、こんなことでいいのか。でも、呑むときゃ きちんと呑んでおこう。





ところで、1軒目の店を出た時、真夜中だって言うのに街は非常に明るくて人も結構多かった。そんな駅前の広場で津軽三味線を弾いている若者がいた。



その演奏が素晴らしかったので、ちょっとだけ立ち止まって皆で聴いていた。



わいわいがやがやした人だかり。



それは人が多いから当然のざわめきなんだけど、何やら遥か上空からもざわめきが聞える。



ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ聞えて来る。



何で上空からざわめきが?と不思議に思って見上げると、白い生き物が物凄く沢山飛んでいる。



あれは何?鳥なの?それとも蛾のような虫?何で真夜中なのにあんなに沢山?



人ごみの中で私一人が上を見上げていたのでその様子が目立ったのか、夫や同僚数人も「何?何か見えるの?」一緒に空を見上げた。



「ああ、あれはコウモリだよ。」と夫が教えてくれた。



コウモリ!



こんな街中に?!



ビルとビルの間に広がる大きな夜空を無数のコウモリたちは飛んでいて、ぺちゃくちゃと騒いでいる。



だけど、皆にはこの「ぺちゃくちゃ」が聞えないらしい。「えー?鳴き声までは聞えないよ。」と言われてビックリ。



鳴き声って言うよりも明かに話し声なのに。それもこんなに甲高くて大きな。



私の耳がおかしいのか。それともたまたま彼らの周波数を捉えているのか。(どっちにしてもおかしいか。)



しかし、そのコウモリたちが、明らかに地上の津軽三味線に合わせて、躍るように飛んでいるのは周知の事実だった。輪を広げて回ったり縮まったり広がったり。



「すっげー。曲に合わせて舞っているように見えるな。」



それどころか、私の耳には、きゃーきゃーわいわい歌っているのも聞こえていた。異国語だけど、何だかあれは彼らが持っている言語のような気がする。もっと近かったらもっとハッキリわかるんだろうか。



三味線の曲が途切れると人々の拍手が起り、その代わりに上空のコウモリたちは消えて行く。木々に止まったりビルの屋上で休んだり。



コウモリが一匹もいなくなった空っぽの空に星とお月様。



しかし、次の曲が始まった途端、再び無数のコウモリたちが皆「わーーっ♪」と夜空に飛び出して来て、舞い、喋り、歌っているのだ。



これは凄いものを見たと感動した。コウモリまで楽しげにパーティしている。笑い声のようなものも聞こえる。



何がビックリしたかって



今まで見上げなかった街中の空にはコウモリが。



ちょっと怖い生き物だと思っていたコウモリが結構かわいく歌っていたりして。



その真っ黒なはずのコウモリは、夜の照明を浴びると地上からは真っ白い鳥のようにも見えていて。



私は演奏者にも教えてあげたいくらいだった。



上空にも観客がいたと言うことを。彼らもあなたの素晴らしい演奏を聴いていたってことを。