成増で大きな刺激を受けた私は、翌日ホームでジェフリーの練習をする。
しかし、昨日見たスプラッシュは自分にとってコマンドやタイミングが難しすぎるのだ。
コンピューター相手にも出ず結局慣れた「サラ」で対戦に入る。
「サラ」というキャラは、最初から遊んでいるのもあり、この当時は一番思い入れのあるキャラであった。店内で遊んでいると、またしても店長さんとバトル。お互い勝ち負けを分け合い、この日は店を早めに出る。
数日後、久しぶりにバーチャを楽しもうと仕事帰りに成増のセガワーへ行く。
今回は一人というのもあって、慣れない環境と緊張感がこの時はあった。
店内に入ると、やはりバーチャ付近は大繁盛で順番待ちの列とギャラリーでとても賑やか。
その輪に入り、対戦をするもボコボコにされてしまう…。
負けずに対戦の順番のルールを守りつつ、どんどん乱入を続けていく。
1回100円の対戦で2000円ほど使った所で一服タイム。
台を見渡すと、またしても前回のアキラが連勝を重ねていた。
他の台よりギャラリーも多くやはりこのゲーセンでは、かなりの有名人らしかった。
対戦をしていると、ある程度その人のタイプといったものがわかるようになってくる。
① ホームの店長さんのような温情型のタイプ
② 完全に勝利至上主義でどんな手段を使っても勝つ!それがどんなに醜い戦い方でも勝つ事に全てをかけるストロングスタイルなタイプ
③ ファンタジスタなタイプ 美しい勝ち方をし、自分の理想とする勝ち方を目指し、つまらない勝ち方じゃ納得しないタイプ 別な言い方をすれば魅せるタイプ
自分が独断と偏見で判断すると、この3タイプに別れる機会が多かったと感じた。
このアキラ使いは間違いなく魅せるタイプで、ギャラリーを引き付け、尚且つすごく強い!といったある意味理想系な人だった。
数日後、結婚を控えている身にも関わらず、連日バーチャに明け暮れている自分にとって金欠という状態が常に付きまとうようになってくる。
対戦台はかなり勝ち越さない限り、どんどん100円玉を浪費してしまうのだ(笑)
下手な自分はすぐ1000円が無くなり、長くいるとすぐ5000円が無くなる(笑)
多い時は1日1万5千円くらい対戦で使った事もあるくらいだ(笑)
そんな月日を過ごしていくうちに、またしてもバーチャの本に出会う。
「バーチャファイター マニアックス」という本である。
この本は前回購入した本より、全てが詳しく、各キャラクターの技が全て写真つきで載っていて、発生速度や持続時間、ダメージ等も記されていた。
即購入し、しばらくは予習(笑)に励むようになる。
しかし、これが自分の実力を格段に上げる要素になった。
使える技や発生速度、中段か上段か、等色々と自分で考えるようになり、知識といった部分が非常に豊かになってきたのである。
聞きなれない言葉も多数あったが、一つ一つを理解し、給料後の実戦へ向けて学んでいった。
給料後、またしても成増のセガワーへ。
やはり、バーチャはすごい混みようだった。
台を見渡すと、やはりいた(笑)あのアキラ使いだ。
1P側がプレイしやすいと思う人が多い中、いつもこの人は2P側に座り、連勝を伸ばしをフィニッシュを華麗に決めていく。しかも最後はいつもの鷂子穿林。
鷂子穿林でKOをすると、画面が通常と違った映りになる。これがまたいい感じなのだ。
思わず見とれながら、ギャラリーをしていると、一人のウルフ使いが乱入してきた。
開始早々、ウルフのPがヒットする。
そうすると、いきなりあの「スプラッシュマウンテン」が出た。
周りがかなり騒がしくなってくる。これがあの、「 パンチスプラッシュ 」という奴だった。
一気に体力を奪われたアキラは中段蹴りから裡門の速攻で体力を削っていく。
しかし、ペース的にウルフの流れであっという間に2本先取。
そして3ラウンド目、混戦の中ウルフの放ったしゃがみPの後、いきなりアキラの足をつかみ出した。
そう、これが「 ジャイアントスイング 」を初めて見た瞬間だった。
周りに歓声が響いた。
アキラ使いもすごいが、このウルフもすごかった。
私は黙ってみていたが、正直、またしても感動してしまった。
この後、お互いに勝ち負けを繰り返し、この名勝負は終わる。
ウルフ使いは歳は自分と同じくらいだったが、非常にセンスが良くなにしろ上手だった。
タバコを吸いながら休んでいる時、どうしてもこの彼に話しかけてみたくなった。
勢いのまま、話しかけると愛想よく話してくれた。
バーチャを通して初めて友達が出来た。