「他人の顔」安部公房
★★★★☆
1964年、雑誌「群像」1月号に掲載された小説で、安部公房の代表作でもある「砂の女」の次に書かれた長編小説でもある。
ずいぶん久しぶりに安部公房の小説を読みました。
この人の小説は結構小難しくて読むのが大変なイメージだったんですけど、今回読んだ「他人の顔」は凄く読みやすくて、普通に面白かったです。
化学研究中の事故によって顔に火傷を負った男は、精巧な仮面を作り他人の顔を手に入れることを思いつく。
他人の顔を作り出すための動機としては妻に拒否されたことがきっかけだった。
様々な研究をして精巧な仮面を作り出し、他人の顔を手に入れた男は他人として妻を誘惑し密会。
しかし、他人と密会をしている妻に嫉妬を抱いてしまう。
自分自身の復讐のために妻を誘惑したはずが、嫉妬に苦しめられることになる男は仮面を抹殺するため、妻にあてた壮大な手記を読ませるが・・・・
みたいな内容です。
とにかく、仮面を作るのに凄く時間をかけて丁寧に描いています。
物語のあらすじだけ見ると凄く単純なストーリーに見えるんですけど、仮面が完成するのに小説の半分くらいかかるんですよね。
そして、それから繰り広げられる主人公の矛盾した葛藤が凄くいいんです。
その矛盾した嫉妬の苦悩を物語った素晴らしい一説がこちら。
まさに一人二役の三角関係だ。それも《ぼく》と、《仮面=もう一人のぼく》と、《おまえ》という、図面に引けばただの直線になってしまう、おそよ非ユーグリッド的な三角関係だったのである。
この表現は素晴らしくいいですね。
最高だと思います。
非ユーグリッド的三角関係
ってロマンチックな響きを持ってますよね。
なんかで使いたいですw
物語としての面白さもあるんですけど、そこはやはり安部公房さんなので、顔や仮面についての哲学的な考察が随所に見ることができます。
世界と自分との間に境界線を作って、そこから傍観する。
みたいな感覚は安部公房もこれまた代表作の1つでもある「箱男」でも見られた視点なのかな、って思ったりもしました。
人間にとって顔とはいったいどのようなものなのか?その辺をかなり執着している主人公の思考が凄く面白いし、世界全体を仮面としてしまうような発想も面白かったです。
まだ読んでいない安部公房の作品もあるので、またちょこちょこ読んでいきたいなぁ、と思いました。
気になった方はぜひとも読んでみてください。おすすめです。
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