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渋谷宙希のブログ

音楽、映画、写真、本。趣味のブログです。

 

 

「レイコちゃんと蒲鉾工場」北野勇作

★★★☆☆

 

 

ここ最近リバイバルブームがきている作家北野勇作さんの小説です。

 

 

北野勇作さんの小説といえば、記憶が曖昧な状態をそのまま小説にしたような摩訶不思議な物語が多いのですが、この小説もまさに摩訶不思議な世界を描いたものでした。

 

 

ただ、今まで読んだ北野作品に比べるとしっかりとした説明がある作品だなぁ、と感じました。

 

 

今まで読んだ、北野さんの小説は説明らしいものが一切なく、解釈のすべては読者にゆだねられているものが多かったような気がするんですけど、この作品は珍しくちゃんとした説明のようなものがありました。

 

 

ちゃんと意味がわかる内容になっている北野作品というのも珍しいので、これはこれで楽しめました。

 

 

 

 

蒲鉾工場で働く甘酢は入社して日が浅いにも関わらず、工場で作っている蒲鉾に誘拐された出子山係長の救出を担当することになる。

 

 

甘酢くんと一緒に誘拐事件を担当することになった豚盛主任と二人で特殊事件調査討解決係という新しい部署に配属されてしまう。

 

 

そんなわけで、会社の中で次々と起こる不思議な事件の解決にあたる甘酢と豚盛だった。

 

 

ある日、工場の近くで迷子になていた少女レイコちゃんを彼女の母親が営む喫茶店へ送ってあげたことで、毎日この喫茶店に通うようになった甘酢くんはここでも、数々の奇妙な事件と遭遇することになるのだった・・・・

 

 

 

 

みたいなお話しです。

 

 

まず、最初に

 

 

板の上にある世界

 

 

が舞台のお話しであるというような文章から始まります。

 

 

板の上の世界というのはそのまま蒲鉾を連想させられるんですけど、板の上というのは劇場の舞台の上ってイメージもあります。

 

 

さらに、この物語にはつねに戦争の影が見え隠れします。

 

 

なので、

 

 

舞台は部隊でもあるのかしら?

 

 

なんてことも思ったり。

 

 

舞台は虚構の世界であるのに対して、部隊はリアルそのもののような気がします。

 

 

そんな、虚構と現実の境目がない世界が蒲鉾の世界なんじゃないかしら。

 

 

北野勇作の小説は、つねにこの

 

 

虚構と現実

 

 

の境界線がハッキリしない物語が描かれています。

 

 

現実と思っていたものが、実は書き換えられた記憶だったりする。

 

 

記憶が本当じゃなかったら、現実なんてものはないんじゃないか。って思ってしまう内容のものが多いですね。

 

 

北野勇作の小説は全ての作品がどこかで繋がっているようなものが多いと思います。

 

 

自身の中にある世界をひたすら書き続けているとい作家なんじゃないかと思うんですけど、そういう作家の作品は個人的に凄く好きです。

 

 

以前きつねのつきの感想をブログに書いた時

 

 

いつもの北野勇作の小説やん

 

 

みたいなことを書いたんですが、そのブログを北野勇作さんご本人が読んでくださったみたいで、Twitterで

 

 

ありがとうございます。まぁいつものあれですよね。

 

 

ってリプもらったんです。

 

 

まさか、著者さん本人から感想文の感想をもらえるとは思ってなかったんで

 

 

いつものあれが好きなんで褒め言葉ですよー!

 

 

って返信したら

 

 

もちろんわかってます。みんな、自分の「いつものあれ」だけを書けばいいのに、とよく思います。そのために人間は大勢いるんじゃないのか。

 

 

って返事をいただきました。

 

 

この言葉は本当に名言ですよ。

 

 

世の中には色々な人間がいるんだから、みんな自分の「いつものあれ」を書けばいいんですよね。

 

 

凄く腑に落ちる言葉です。

 

 

自分の中に確固たる世界が存在している人が好きです。

 

 

北野勇作さんもまさにそんな作家だし、最近ハマりまくっているMaison book girlをプロデュースしているサクライケンタさんもそうだと思うし、この前のブログで少し触れた60年以上誰に見せるわけでもなくひたすら「非現実の王国で」という1つの小説を書き続けていたヘンリー・ダーガーもそうだと思うんですよ。

 

 

違うテイストの作品に触れたかったら違う作者の作品に触れたらいいんですよね。

 

 

この「レイコちゃんの蒲鉾工場」もやはり北野勇作の持っている世界が十分発揮されていると思います。

 

 

レイコちゃんの母親が営んでいる喫茶店の名前はハッキリと出てこないんですけど、おそらくは

 

 

ハル

 

 

でしょう。

 

 

これは、映画「2001年宇宙の旅」の登場する人工知能の名前ですが、北野勇作のデビュー作昔、火星のあった場所に登場する人工知能の小春もここからだし、「きつねのつき」に登場する主人公の娘は春子もおそらくはここからなんじゃないかと思っています。

 

 

自分の中にある世界の重要な存在として、同じ名前が繰り返し出てくる感じも凄くいいな、と思います。

 

 

しかも、「2001年宇宙の旅」にしろ、北野勇作の小説世界に強い影響を与えたと言われている「ストーカー」は自分も凄く好きな小説や映画なので、共感できる部分もあります。

 

 

北野勇作の小説は意味がよくわかんない

 

 

ってなる人が多いかもしれませんが、

 

 

意味が全部わかる小説なんか面白くないじゃん。

 

 

って思うんですよね。

 

 

世界は意味のわからないことばかりですから、全部意味がわかる世界なんて存在してないんですよ。

 

 

だから、小説も意味わかんなくてもいいんです。

 

 

その世界が好きなら、面白いと思うんですよね。

 

 

北野勇作さんの小説は最近電子版として復活している作品が多いようです。

 

 

気になったっ方はぜひ読んでみてください。

 

 

 


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