「薬指の標本」小川洋子
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先日、映画「薬指の標本」(映画の感想はこちら)を久しぶりに観て、原作も久しぶりに読みたいな、と思ったので読んでみました。
久しぶりに読むとやはり凄く良かったので、小川洋子の小説を読み返すターンに入りそうです。
記憶が定かではありませんが、確かこの「薬指の標本」が初めて読んだ小川洋子の小説だったと思います。
なので、とても思い入れの強い作品となています。
小説の雰囲気も凄く好きだし、物語としても好きです。
この本には「薬指の標本」と「六角形の小部屋」という中編小説の二篇が収録されているのですが、この「六角形の小部屋」もとてもいい小説なので、この本を最初に読んですっかり小川洋子ファンになってしまったというわけです。
標本室で働き初めて1年ほどになる「わたし」は、以前働いていた清涼飲料水工場での事故で薬指の先を失っていた。
標本室は元々女性専用のアパートで、今でも2人の女性が暮らしている。
そして、その2人の女性の住んでいる部屋以外はすべて標本を保管するために使われていた。
標本室の仕事は、標本制作の依頼にやってくる客さんからどんなものを標本にしたいのかを聞き、それを標本技術者の弟子丸氏が標本にするというもの。
依頼される標本は、火事になった家の焼け跡から生えてきたキノコ、愛する人からもらった音楽、愛鳥の骨などさまざま。
「わたし」は標本室の仕事が気に入っていた。
「わたし」は弟子丸氏から靴をプレゼントされる。
その靴は足に自然とフィットし、まるでその靴を履いて生まれてきたようだった。
ある日、キノコの標本を依頼した少女が再び標本室へやってくる。
その少女は再び標本の依頼をいしたいといい、その品物は家事で負った火傷の痕だった。
「わたし」もいまだ入ったことがない地下の標本制作室に弟子丸氏と共に消えていった少女を見て、動揺する。
そして、いつしか自分も体の一部を標本にしたい。と願うようになる。
といった内容です。
基本的には映画と同じなんですが、原作の小説のほうがよりコンパクトにまとまっています。
やはり、内容的には原作小説のほうがおもしろいですね。
人間なら誰でも持っている”消してしまいたい記憶”や”心の傷”といったものを標本にして封印することで、その記憶から解放されていくという物語です。
そして、その標本を制作する弟子丸氏と主人公「わたし」との不思議な関係もとても面白いです。
弟子丸しからプレゼントされた靴を履き続けた「わたし」はじょじょに、その足の自由が奪われていきます。
体の一部が失われていく感覚は小川洋子さんの小説のテーマとしてたくさん扱われているものです。
この小説ではそれが割と直接的に表れています。
主人公は薬指の先を失い、そして、弟子丸氏の靴によって足の自由を失う。
しかし、それが彼女にとっての幸福の形なのかもしれない。
「わたし」は恋愛経験があまりない女性という設定です。弟子丸氏との関係もこれが一体何なのかわからないうちにどんどんと深みにはまっていく様子が描かれていますが、それが彼女にとって不幸なのではなく弟子丸氏に自由を奪われることが幸福なのだといいます。
この辺の感覚というのは女性独特の感覚なんでしょうか。
いや、男女の違いは関係ないのかもしれません。
愛する人の虜になりたいという願望は大なり小なり誰しもが抱いている感情なのかもしれないですね。
「六角形の小部屋」は、その小部屋に入ると自分の中にある自分でも認識されない自分が素直に出てきて、なんでも話しだしてしまう。
部屋の中には誰もいないし、その話が外に漏れ出ることもない。
主人公は偶然たどり着いたその小部屋でさまざまなことを語り、自らを解放させていく。
といった内容です。
この六角形の小部屋にはぜひ自分も入ってみたいです。
自分が一体どんな話を始めるのか凄く興味あります。
自分の中にある何かを発散させることで、前に進めるということってよくあることだと思います。
「薬指の標本」ではその何かを標本にして封印してしまいますが、この「六角形の小部屋」では、それを小部屋の壁に吸収させてしまっているのだろか、と思いました。
小川洋子さんの小説はやはり好きです。
これからしばらく小川洋子さんの小説を読み返していきたと思いました。
この小説未読の方はぜひとも読んでみてください。
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