読書「尾崎翠 集成(下)」尾崎翠 | 渋谷宙希のブログ

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「尾崎翠 集成(下)」尾崎翠
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「第七官界彷徨」(感想はこちら)で有名な尾崎翠さんの作品集の下巻です。



個人的には上巻(感想はこちら)よりも好きでした。



上巻では「第七官界彷徨」やそれに関連する作品が収録されていたんですけど、今回読んだ下巻では初期の少女小説や、戯曲、映画評などが収録されています。


収録作品は以下の通り。

青いくし
あさ
悲しみの頃
悲しみを求める心
無風帯から
花束
詩「嵐の夜空」
空気草履
露の珠頚飾をたずねて
少女(おとめ)ララよ—伝奇物語
「琉璃玉の耳輪」
琉璃玉の耳輪
アップルパイの午後
映画漫想1~6
「蒼馬を見たり」評
杖と帽子の偏執者
新秋名果
春の短文集
大田洋子と私



どの作品も凄くいいんですよ。


個人的には短編小説の「無風帯から」や、少女小説「空気草履」、戯曲「アップルパイの午後」などがお気に入りです。



「無風帯から」はある青年から友人へ向けた手紙の形式になている小説です。



主人公は妹に対してなにやら特殊な愛情を感じていたところ、実は妹とは異母兄妹であることが発覚。


そんな話を長々と友人のMへと語る主人公。


そんな妹はどうやらMに好意をもっているようで、そんな妹を受け入れてやってくれ。という兄からのお願いの手紙なんですよ。


なんか、この兄と妹の不思議な関係や、友人Mに一体なにを伝えようとしているのだろうか?ってところが小説全体を不思議な雰囲気で包みこんでいるような気がして面白かったです。


この兄の妹に対する愛情がなかなか特殊でおもしろいんですよ。


尾崎翠は兄妹の話が多いような気がします。


有名な「第七官界彷徨」も、兄の住んでいる家に妹の主人公が引っ越してくる話だし、集成の上巻に入っている「初恋」も実は兄妹の話だし個人的に好きな作品は兄妹の話が多いような気がします。


小説全体を漂う幻想的な雰囲気は尾崎翠が持っている独特の空気感のような気がしました。


「空気草履」はとにかく可愛い少女小説。


下駄修理の仕事をしている祖父と一緒に町へ出かけるのを楽しみにしている少女さだ。


町で見かけたある空気草履に心を惹かれてしまったさだは、あの草履どこかで見た気がする。


と感じる。


さだは祖父が下駄修理をしている横で、夢の世界に迷い込み、例の空気草履を見る。


その草履はとても美しい人が履いていて、さだはその美しい人の後をいつまでもついて行くのです。


現実の世界に戻ったさだに祖父は「松木さんのところへ履物を届けておくれ」とお使いを頼まれる。


松木さんの家に行ったさだはそこで、例の空気草履を見つけ・・・・・


といったお話です。


町にある美しいものを眺めるのが好きなさだが本当に愛らしいんですよ。


そして、ある空気草履を見つけて心を奪われてしまうのです。


その草履は実は以前見たことあるものだったんですが、その草履との再会を描いている。


その草履の持ち主とは夢の世界で会うことができるんですけど、このシーンがとにかく幻想的でいいんです。


そして、ラストも凄く切なくて可愛い。


この本に収録されている少女小説はどれも凄くいいんですけど、個人的にはこの作品が一番好きでした。


戯曲「アップルパイの午後」もこれまた兄妹のお話。



兄と妹がひたすら会話をしているもの。


向かい合った机で何かを書いている妹と何かを読んでいる兄。


兄が突然妹の頭を叩き


妹「何」
兄「莫迦」
妹「訳をおっしゃいよ」
兄「恥さらし」
妹「訳をおっしゃいってば」



といった具合に言い合いが始まります。


兄が怒っている原因は妹が校友会の雑誌に書いた記事。


「私は不幸にも唐辛子のはいったソオダ水のような兄を持っています」



から始まる文章に憤慨しているのです。


そして、そこから妹の普段から女性らしかぬ言動に話しはおよび兄は


「恋をしろ」


と言う。


妹は恋をするため恋文のお稽古を書いていた。


恋文のお稽古をしている妹に対して喜びを隠せない兄。


そこへ、妹の友達で可憐な少女雪子の兄松村が登場。


松村は兄の友達でもあり、雪子からの暗号を兄に伝えるためにやって来るのです。


そして、ここでアップルパイの登場。


アップルパイを食べながら妹と松村は2人になり・・・・・・


あぁ、なんとも可愛らしいお話!


兄と妹の会話がとても可愛いし文学的で素敵です。


そして、物語が進んで行くうちにどんどん妹の書いている恋文のお稽古の真相がわかってくる感じが凄くいい。


これは、実際に誰かに演じてもらって動画で撮影したいですね。


映画評なんかもなかなか独特の視点で映画を語っていておもしろかったです。


見たことある映画は「メトロポリス」ぐらいでしたけど。


尾崎翠さんの作品は本当にどれも少女の持つ独特の世界観を、幻想的に描いていて、凄く素敵です。



まだ読んだことないって方は是非とも「第七官界彷徨」から読んでみてください。


そして、尾崎翠は「第七官界彷徨」しか読んだことない、って方は是非この「尾崎翠 集成」を読んでみてください。






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