読書「ペトロス伯父とゴールドバッハの予想」アポストロス・ドキアディス | 渋谷宙希のブログ

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「ペトロス伯父とゴールドバッハの予想」アポストロス・ドキアディス
★★★★☆







久しぶりに数学関連の本が読みたくなって、この小説を読み返してみました。


数学の世界を描いた小説というのはそれほど多くない気がします。


その中でも面白い数学小説というのはさらに少ない。


個人的には今まで2冊面白い数学小説に出会いました。


1冊は小川洋子の著書「博士の愛した数式」で、もう1冊がこの「ペトロス伯父とゴールドバッハの予想」です。


どちらも、


美しい芸術としての数学を描いている数少ない小説だからです。


今回久しぶりに読み返してみて、新たな発見がたくさんありました。


以前読んだ時はまだ数学に興味を持ち始めたばかりの頃だったので、小説内に登場する数学者や、数学の難問に関してはほとんど知識がなかったんですが、今回はそれらの数学者や問題のことをある程度知っていたので、面白さが倍増しました。


しかし、この小説は数学の詳しい知識や、数学者や、難問の内容などを知らなくとも楽しめる内容になっております。




主人公の伯父ペトロスは、ギリシャの田舎に隠居し、ほとんど人と会うことはない。


一族からは嫌われ、父親ともう一人の伯父はペトロス伯父さんを憎んでいるかのような態度だった。


そんな、ペトロスに興味を抱いた主人公はひょんなことから実はペトロスが若い頃、天才数学者と言われ、大学の教授をしていたことを知る。


ペトロスの輝かしい過去を知った主人公は数学に興味を持ち、ついに自らも数学者になりたいと望むようになる。


そのことをペトロスに相談すると、大反対を受けてしまう。


しかし、食い下がる主人公にペトロスはある問題を出す。


その問題を夏休みの3カ月以内に解くことができたら数学者になってもいい、しかし、問題が解けなければ数学者の才能がないとみなし、絶対に数学者になってはいけない。という約束を交わす。


一見簡単に見えたその問題だったが、いくら考えても解けることはなく、期限の3カ月が過ぎても問題を解くことができなかった主人公は数学者への道をあきらめる。


それから数年し、実はその問題は数学上の超難問である「ゴールドバッハの予想」であるということを知る。


数百年以上誰も解けていない難問を出して、数学者への道をあきらめさせたペトロスに対し激しい怒りを感じた主人公は、伯父を激しく責め立てる。


すると、ペトロスは自らの激しく、悲惨な数学人生を語りだすのだった・・・・・・




といった内容。


実はこの物語に登場するペトロス伯父さんにはモデルとなった数学者がいます。


それは、ギリシャ人の数学者クリストス・パパキリアコーロス。


実際のパパが取り組んでいた問題は「ゴールドバッハの予想」ではなく、「ポアンカレ予想」というトポロジーの超難問だったそうです。


しかし、「ポアンカレ予想」は問題の内容が複雑で、誰にでもわかる内容ではないので、問題の内容が簡単で誰にでも理解できる「ゴールドバッハの予想」に変えて書かれたようです。


ちなみに、この世紀の難問と言われている「ゴールドバッハの予想」って一体どんな問題なのでしょうか?それはこんな問題です。


2より大きい全ての偶数は、2つの素数の和で表すことができる。ということを証明せよ。


例えば6なら


6=3+3


8なら


8=3+5


このように、偶数は素数の和で成り立っているように見えます。


しかし、偶数というのは無限にあります。


これがとてつもなく大きな数字になった時も本当にこの法則が成り立つのか?


というのを証明しなければなりません。


一見簡単に見えますが、もう数百年も未解決の超難問です。



そして、この超難問に挑み人生を狂わせたのがペトロス伯父さんだったのです。



小説の中では、イギリスの有名な数学者であるG・Hハーディ、J・E・リトルウッド、そして、僕が大好きなインドの超天才数学者であるスリニヴァサ・ラマヌジャンが登場し、ペトロス伯父さんと共同研究を行います。


個人的にはハーディとラマヌジャンという数学者には格別な思い入れが強いので、この2人が登場するだけで大興奮です。


ラマヌジャンの天才ぶりはこの小説の中でもサラっと描かれていますが、もしこの天才に興味をもたれた方はラマヌジャンの伝記「無限の天才」をお勧めします。めちゃくちゃおもしろい本です。


「ゴールドバッハの予想」に没頭し、自分がこの問題を最終解決するために研究の中間発表のようなものを一切せず、研究していること自体を隠し続けてしまったペトロスはそのせいで数学会から大きな後れを取ってしまうことになるのです。


この誰にも言わないで超難問の研究を人知れず行うというのは、かの有名な「フェルマーの最終定理」を証明したアンデリュー・ワイルズを彷彿とさせます。


そして、いくら頑張っても証明できない「ゴールドバッハの予想」に対し、絶望していたペトロス伯父さんに追い打ちをかけたのが、数学界を震撼させたゲーデルの「不完全性定理」でした。


この定理は簡単に言うと


世の中にはいくら頑張っても永遠に証明できない問題があるよ。


ってことを証明したものでした。


ペトロス伯父さんは「ゴールドバッハの予想」はきっと証明できない問題なんだ!俺は証明できない問題に一生をささげたのかー!!


って絶望しちゃって、隠居生活をはじめてしまうんです。


しかし、どの問題が証明可能で、どの問題が証明不可能なのか事前に調べる方法はこの世に存在しない。というのもアラン・チューリングによって証明されます。


したがって、「ゴールドバッハの予想」が本当に証明不可能な問題なのかは誰にもわかりません。


ちなみに、チューリングはコンピュータの基礎となるチューリングマシンの開発者として有名です。チューリングに関しては最近彼の出来が映画になったそうですね。


数学者の人生って本当に波乱万丈なんで、誰を取り上げても映画になると思いますが、なぜラマヌジャンの人生が映画になっていないのか!って思います。絶対に一番面白いと思うんですけどねぇ。


とにかく、この小説は本当の数学とは一体なにか?真の数学とは芸術である。ということが描かれている数少ない小説だと思います。しかも、凄くおもしろい。


数学嫌いな人でも普通に楽しめる内容になっています。それどころか、これを読めばきっと数学に対して今までと違った見方ができることと思います。


興味のある方はぜひ読んでみてください。





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