生物還元物質「植物マグマ」の無限のパワー④

 


第3章 合成化学一辺倒の現代社会に終止符を打つ


 嘆いているばかりでは何の解決にもならないのは、歴史が証明している。レイチェル・カーソンが、今から60年ほど前にあれほど警告した農薬の有害作用をDDTとかBHCだけをスケープゴートにして農薬そのものを人類は使用し続けた。その結果は現在の農業のあり方を見れば、一目瞭然である。今では極めて多種類の農薬が開発され、60年前とは比較にならないほどの使用量となっているのはなんとも皮肉なことではないか。


1. 許容量という安全のマジック

 許容量という安全のボーダーラインを作って化学物質の使用を認めるような政策は人類と地球を滅ぼす元凶であることを世界中の人々に知ってもらわなければならない。

 何故かといえば、中国で大気中に放出した有害物質が、編西風に乗って日本各地に大気汚染をもたらしているのである。又、我が国の食品の自給率は40%を切っている状態といわれるが、実態はもっともっと低いのではないか。食品の多くは海外からの輸入に頼っているわけで、どれだけ化学物質まみれで作られているかもわからない食材を私たちは口にしているわけで、世界が一体となって化学物質を使わないような社会を少しずつでも構築しない限り、何百年か先には人類はいなかったなどということが現実化することも夢物語とはいえまい。


2.  許容量とは妥協の産物なり

 私は30年近く化学物質の毒性を検索する業務にどっぷりつかっていた。人生の約半分である。この毒物屋稼業の体験が、これから本題に入る私の「電子再研究」に大きな影響を与えたのはいうまでもないことであるが、もっとも大きなプラスになった資産は、「化学物質の安全性の許容量を決める試験をすることは、毒についての知識のない一般の使用者に国が決めた許容量以下なら安全だということを植え付けさせてしまうという、とんでもない行為であることを知ったことである。」まさに、これが国策であり、企業擁護策であり、「使用者の健康を考えた上でのことでは全くといっていいほど、ないと言える」ことである。何故ならば、この許容量なるものは時の流れと共に、変更されていることがあるのです。しかも、規制されている化学物質の数は、1%にも満たない。例えば、職場で使用されている化学物質に対する環境基準は300物質程度であり、待機中の化学物質についてはもっと少ない。

 食品添加物は合成化学物質を主体として1500あまりも認可されているが、使用を規制している化学物質はそれ以下である。500万種とも600万種といわれる化学物質のうち、曲がりなりにも毒性調査が行われているものは、せいぜい10万種までであろう。全体の2%程度しか実施されていないのが現状であるが、許容量や使用量が制限されているのはさらにそのうちの数%程度にしか過ぎない。

 おおよそ0.1%程度ということになるので、1000の化学物質から1つだけ選んで規制している比率なのである。


3. 化学物質に許容量を設けるならば、それは「ゼロ」である

 冒頭でも申し上げたように、化学物質は地球上に存在しない物質なので、生体にとっても、存在しない物質であるから侵入された場合、敵とみなし、排除する行動にでる。この行為そのものが、体にとって大きな負荷がかかる。さらに化学物質固有の有害作用があれば、さらに体は負荷がかかるのは当然である。

 そのようなものに対して、ここまでは安全であるというような基準値など設定すること自体がおかしい。ゼロ以外の基準値などない。何故かといえば、極めて微量で何の変化も生じないレベルの摂取でも、生物界全体で見ると、生殖異常や、奇形などが生じており、何世代にもわたってから化学物質の障害が出現するなど、これまでの急性、あるいは繰り返しの摂取で生じていた障害だけではなく、子供や孫さらにその子供というように、気の遠くなるような長い世代を経て、障害が出るような毒性が可能性ではなく、現実の結果として示唆されているのである。


4. 環境ホルモンなる造語は今、どこに

 つまり、どんなに僅かな量であっても生物が持っていないものが、生体に入ってくると、いつかは障害をきたすということが、動物界や植物界で異変として起こっている。それが「環境ホルモン」なる造語の化学物質で、おおよそ30年近く前に、脚光を浴びたものであったが、今ではほとんど活字に出てこなくなってしまった。国が完全にフタをしてしまったら、もう誰もそれを開けることは不可能でしょうね。

 環境ホルモンが解決を見たわけでもないのに!私たち人類は本当に熱しやすく、冷めやすい生き物なのですね。そして学習能力が欠如しているのはこれまでの歴史がよく証明している。「歴史は又、繰り返される」この言葉はまさしく言い得ているのではないだろうか、つまり、化学物質の許容量など決めても、それは、その人本人がある時期まで、障害が生じないという可能性を示しただけで、それすらの保障もこころもとない。というのは、人間は単一の化学物質だけを摂取しているのではなく、何十、何百という化学物質の侵入を毎日受けて生活している。しかるに、この許容量はその物質だけが単独で入ってきた場合の有毒性だけを示しているのであるから、全くといっていいほど実態を表してはいない。


5. 水俣病も環境ホルモンもまだ終わっていない

 水俣病という、まれに見る企業のエゴイズムで生じた大規模な環境汚染は、世界中の人々に、化学物質とはかくも恐ろしい化け物であることを白日の下にさらけ出した事件である。これは当事者だけでなく、人類にとっても、また地球環境にとっても過去のことではなく、いまだ解決されてはいない。水銀で壊された方々の体は、元通りには戻っていない。それどころか、もっともっと悪化している。病気を治すことはおろか、少しでも良化させることすら出来ていない。

 地球環境も同じである。自然界を汚した有機水銀化合物は水、土壌に深く浸透し、さらに動植物、微生物にも侵入し、生態系への新たなる障害の時を待っている。化学物質の毒作用に対して、現代医療とはかくも無力で、無抵抗であったとは!自らの手で作り上げた合成化学物質の副作用を修復する能力を全く持たずに、現在も大量に作り続けているのである。

 ごく僅かの水銀でも、それが子や孫、そしてひ孫にと、遺伝情報としての異物反応が伝えられたら、とてつもない有害作用が生じる恐れがあると推測する。何故かといえば、代表的な環境ホルモン物質であるメチル錫や、エチル錫、ブチル錫などの有機錫化合物は船底や魚網の貝などの生物付着防止塗料として広く利用されてきているが、私が携わった動物実験や作業者の障害事例などから猛烈な皮膚障害と、肝臓障害を生じることが判明した。ところが、この有機錫化合物を少量与えた動物を2代、3代と交配させて、子孫の健康状態を調査した結果、さまざまな異常症状が示された。私は、有機水銀と、有機錫化合物の毒性の程度を比較するような馬鹿げたことをするつもりは無いが、金属同士が有機化したことでお互い、極めて激しい有害作用を生じていることで、一方は次世代にも影響を及ぼしているとなれば、私は水俣病がこのまま収束すると考えるよりも、次世代以降に障害が生じる可能性の方が強いと考えた方が確率が高いのではないか。それ故、当事者の健康状態を少しでも良くすると共に、次世代への影響を起こさせないようにするための研究と処置を、早急に行う必要を私は感じてならない。

 また、環境ホルモンも過去のことではなく、人類が化学物質を製造し続ける限り、続いていることなのである。

 水銀中毒には無機水銀中毒と有機水銀中毒とがある。前者は非常に古くから知られたもので、職業病研究の父とされる Bernardino Ramazzini(伊)もその著書 “De Marbis Artificum Diastriba - 働く人々の病気” の中で、水銀鉱山夫、鍍金屋、鏡職人、錫工などの水銀中毒を記載している。

 我が国では、奈良の大仏建立に水銀鍍金が用いられ(752 - 757年)、その後白粉にも水銀が用いられたので、確証はないが、かなり古くから中毒者はあったものと推定される。次いで、大正時代には寒暖計製造工の水銀中毒が報告され、また、現在でも水銀精錬、水銀電解、計器製造などの工場で中毒が注目されている。

 有機水銀中毒としてはメチル水銀による水俣病(1953年)、阿賀野川有機水銀中毒(1964年)などのいわゆる公害病が世間の注目を浴びているが、職業病としての水銀中毒はほとんどが無機水銀中毒で、また、アルキル水銀以外の有機水銀、例えば酢酸フェニル水銀塩化、メトキシエチル水銀(農薬工場などで用いられている)は例え体内に吸収されたとしても分解が早く、全身症状は無機水銀中毒に近いものと考えられている。


写真:ブチル錫化合物による皮膚炎(中山栄基資料)


男子36歳、フィルム製造工場、8.5年



写真:水銀化合物による障害(労働衛生検査センター資料)
    

①寒暖計製造工の手の振せん


②計器製造工の手の振せん

 

③気中水銀濃度と症状

 

④水銀皮下誤入による肉芽組織

 

⑤腎尿細管における水銀沈着(左側)

⑥塩化水銀をマウスに経口投与(右側) 投与24時間後の尿細管上皮の変性著明



表:内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質


(1)上記中の化学物質のほか、カドミウム、鉛、水銀も内分泌攪乱作用が疑われている。
(2) 環境調査の欄では、●は検出例のあるもの、○は未検出、印のないものは環境調査未実施。
(3)規制等の欄に記載した法は、それら法律上の規制等の対象であることを示す。化審法は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」、大防法は「大気汚染防止法」、水濁法は「水質汚濁防止法」、海防法は「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」、廃掃法は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、毒劇法は「毒物及び劇物取締法」、家庭用品法は「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」を意味する。地下水・土壌・水質の環境基準は、各々環境基本法に基づく「地下水の水質汚染に係る環境基準」「土壌の汚染に係る環境基準」「水質汚濁に関わる環境基準」をさす。
(4)登録、失効、本邦未登録、土壌残留性農薬、作物残留性農薬、水質汚濁性農薬は農薬取締法に基づく。
(5)POPsは「陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画」において指定された残留性有機汚染物質である。
 

 

 

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