皆さまこんにちは。

サイエンスコミュニケーターの上田です。

 

 

お久しぶりのサイエンスコラム。

前回のコラムは昨年9月。いつの間に1年も経ってしまったのでしょうか……

 

さて、絶賛放送中の豊橋市が舞台のアニメ「負けヒロインが多すぎる!」では、6話に当館が登場しましたね。

ということで(?)今回の疑問はこちら。

 

 

 

皆さんの家にも必ずある、水道の蛇口。

当然ながらひねると水道水が出てきます。

 

子どもの頃はよく蛇口から直接水を飲んでは、美味しいだの不味いだのと言い合っていたものですが、確かに水道水には特有の味やにおいがあります。

よく「カルキ臭」と言われる特有のにおいですが、お店で売っているようなペットボトルの水とは何が違うのでしょうか?

 

 

自然界には池や川など水がたくさんありますが、どんなに綺麗に見えてもそのまま飲むことはできません。

いろんなゴミが入っていたり、目に見えない微生物や細菌がたくさん入っていたりするからです。

そこで、水源から採ってきた水は「ろ過」という方法で小さなゴミや微生物を取り除いています。

 

ところが、水に溶けているものや小さすぎる細菌はろ過では取り除けません。

そこで活躍するのが「塩素」

塩素は水に溶けると一部が「次亜塩素酸」というかたちになります。

 

 

この次亜塩素酸はとっても強い酸化力(電気のつぶを他のものから奪いとるちから)を持っています。

 

細菌のからだは膜につつまれて守られているのですが、次亜塩素酸はとても小さくて膜を通り抜けることができます。

 

 

 

こうして細菌の中に入った次亜塩素酸は、細菌が生きていくのに必要なタンパク質やDNAの一部から電気のつぶを奪ってかたちを壊してしまうのです。

こうして有害な細菌を殺したり、活動できないようにすることを「消毒」といいます。

 

 

 

 

ところが、せっかく水を消毒しても皆さんの家に届くまでにまた細菌が増えてしまうと大変ですね。

そこで、水道水は皆さんの家の蛇口から出てくるまで消毒効果が続くように、「水の中に塩素がちゃんと残っているか」を基準として決めています。

これがお店で売っているペットボトルの水と大きく違うところなのですね。

 

 

さて、水道水のカルキ臭は実のところ塩素や次亜塩素酸のにおいではありません。

環境汚染の指標のひとつでもあるアンモニアと次亜塩素酸が反応すると、「クロラミン」という物質ができます。

このクロラミンこそが水道水のカルキ臭の正体。

 

 

クロラミン自体にも消毒効果があるので、カルキ臭がするということは消毒された安全な水である証なのです。

 

水道水の中の塩素や次亜塩素酸、クロラミンは何日かで分解されたり空気中に逃げていったりしてなくなってしまいます。

まさに「鮮度とカルキ臭はトレードオフ」ということなのですね。

 

 

ちなみに、豊橋市では美味しい水道水をボトルに詰めた「とよっすい」を販売しています。

残念ながら現在は在庫がなく販売中止中ですが、機会があればぜひ入手してみて下さいね。

ツワブキ高校と同じ水が飲めるかもしれませんよ!

 

 

豊橋市視聴覚教育センター・地下資源館では、プラネタリウムをはじめ実験ショーワークショップなど、科学に触れる体験を皆さまにご提供しています。

アニメの聖地巡礼でお越しの際にも、ぜひ身近な科学のお話に触れてみてくださいね。

 

 

 

 

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