27.




「助けてって···どうしたの···」
チャンミンが俺を心配そうに見つめる
「まぁ···後で話すよ」
「え?···話振っといて気になるじゃん」
目を見開き俺をガン見するチャンミンを«まぁまぁ»とジェスチャーしながら落ち着かせる
「ごめんごめん」
チャンミンをジッと見つめ落ち着くのを待っている俺の様子に気付いたチャンミンは表情を和らげ俺を見つめた
見つめたまま何も言わない俺にチャンミンは«どうしたの?»って表情で見つめる
「チャンミン···会えて嬉しいよ」
「なに···改まって」
「嬉しいから言ってんだよ」
そう言って微笑むとチャンミンは頬を赤らめた
「寂しかっただろ···」
そう言ってチャンミンを見つめるとサッと俯いてしまった
「チャンミン? 」
少し時間を置いて名前を呼ぶと«うん»って小さな声が聞こえた
「どうした?」
「あはは···」
笑いながらゆっくりと顔を上げたチャンミンの頬に伝う涙
チャンミンが独りで頑張ってきた証でもある
「ヤだな···ちょっと緊張の糸が切れちゃった」
涙を拭いながらチャンミンは照れ笑いする
「弱音吐かずにやってきたんだろ···俺の前で気を張る必要なんてない」
チャンミンに言うと小さく頷いた
「辛いとかないんだよ···周りの方は親切だし···なんかユノの顔みたらホッとしちゃってさ」
そう言って微笑んでいる
「分かってる」
俺はチャンミンに向かってウンウンと頷いた
「向かい合わせで座ってるのが残念だ」
「え?」
「めちゃくちゃキスしたいから」
俺の言葉にチャンミンはクスクス笑う
「チャンミン···」
クイクイと指で合図するとチャンミンはテーブルから身を乗り出した
俺も身を乗り出し身体を伸ばすとチャンミンの唇に唇を重ねた
空港でキスしたあの日以来のキス
柔らかい唇
舌を入れるとチャンミンの舌も絡んできた
リップ音を立てゆっくりと唇から離れる
チャンミンは俺と視線が合うと恥ずかしそうにハニかんだ
「どう?」
至近距離で見つめたまま小さな声でチャンミンに聞く
「え?」
「俺とのキス」
チャンミンは頬を赤らめて小さく頷いた
「気持ちいいよ」
「俺も···」
そう言って微笑み再びチャンミンの唇を塞いだ
«お待たせしましたー»
店員の声を合図にチャンミンは俺の唇から素早く離れる
俊敏なチャンミンに思わず笑った
店員が唐揚げが盛られた皿を並べ終えると部屋から出て行った
「ユノ笑い過ぎ」
チャンミンはプッと頬を膨らませ俺をジロっと睨みながら唐揚げをパクリと食べた
可愛い仕草だけどチャンミン的には怒ってる
「チャンミンの慌てっぷりが可笑しくて可愛くて···ついな」
「冷めないうちにどうぞ」
ふくれっ面なまま取り分けた皿を俺に渡す
「サンキュ」
しばらく食事に集中しつつチャンミンの表情を観察
ふくれっ面しながら食べてたチャンミンの表情がパッと変わる
目を見開き一瞬止まったと思ったら幸せそうにフニャり顔
「美味そうに食べるよな」
声を掛けると幸せ顔でモグモグしてたチャンミンがフリーズして俺を見た
「だって美味しいもん」
「そうだな」
俺がそう言って微笑むとチャンミンもウンと頷いて微笑んだ
「どう···こっちでの生活は」
チャンミンに聞くと少し考える仕草をして
「うん···最初は文化の違いに戸惑う事もあったけどだいぶ慣れてきたよ」
そう言って微笑むとビールを一口飲んだ
「日本語学校で勉強して韓国語講師の仕事して···本屋でバイト···」
「ちゃんと寝てるか?」
「朝まで爆睡だよ」
「クタクタって事じゃん···」
俺がそう言うとチャンミンは«そっか»って言って微笑んだ
「チャンミン···あんまり無理したら身体が持たなくなるから」
「心配しないでユノ···ちゃんと食べてるし大丈夫だよ···あ···僕ビール追加するけどユノどうする?」
まだたんまり残ってる俺のグラスを見つめると
「要らないね」
クスクス笑いながらそう言って店員を呼んだ
«お待たせしましたー»
程なくして店員が来るとチャンミンはビールと焼き鳥の盛り合わせを追加注文した
「ねぇユノ」
「ん?」
「重要案件···ホントは上手くいってないとか?」
俺はチャンミンをジッと見つめ
「そうだとしたら···助けてくれる?」
チャンミンは視線を一点に集中させ考えている
「僕が役に立てる事があれば···でも重要案件で僕が役に立てる事はないと思うけど」
苦笑いするチャンミン
「助けになるって俺は思ってんだけど」
「そう···なの?」
俺はチャンミンを見つめ頷いた
「でもさ···仕事関係でしょ?」
そう言ってチャンミンは俺の反応を伺っている
「どうかな···少しだけ絡んでるのかな」
俺の返答にチャンミンは天を仰ぐポーズ
「大丈夫だよ···お前は仕事で困ってた俺を助けてくれた実績があるじゃん···忘れてないだろ?」
「うん···忘れてないよ」
「俺たちが出会ったきっかけ···お前はモモだったけど」
「そうだね」
チャンミンと視線が合いお互いクスクスと笑った
「ユノ···聞いていい?」
「なに?」
「どんな内容なの?」
チャンミンの言葉に俺は黙って頷いた
「ちょっと会わなきゃいけない人がいるんだけどさ」
「その人と会うために日本に?」
「そうだけどチャンミンにも会う為でもあった」
俺はチャンミンを見つめながら話す
「先方と会う時に一緒に付いてきて欲しいんだ」
「それは···」
そう言うとチャンミンはしばらく黙ったまま動かなくなった
「ん?」
「モモで?」
「いや···モモじゃなくチャンミンでだよ」
そう言ってチャンミンを見つめ微笑むとチャンミンは安心した表情で俺を見つめた
「女性ものの服とか処分してきたからさ···」
「そりゃそうだろ···足を洗ったんだし···だろ?」
「うん···だからモモでなら買わなきゃダメかもって思っちゃった」
「いやいや···モモは必要ない···俺はチャンミンを連れて行きたいんだから」
そう言ってチャンミンを見つめるとチャンミンは嬉しそうに微笑んだ
「あ···会う日はいつなの?」
「まだ返事してない…チャンミンの返事を聞いてからって思ってたから」
チャンミンはスマホを取り出し予定を確認し始めた
「夜でもいいの?」
「大丈夫」
「だったら今日みたいな時間なら明日でも明後日でも大丈夫だよ」
「OK···じゃあ聞いてみるから待って」
俺は席を外し直ぐ先方に連絡して約束を取り付けた
「明後日に決まった」
「早っ···」
部屋に戻って来た俺にチャンミンはそう言って笑っている
俺は席に座るとスマホをテーブルに置き唐揚げをパクリと食べチャンミンに微笑む
「生姜が効いててほんと美味いな···ほらチャンミン」
チャンミンの口元に唐揚げを持っていくと大きく口を開けて唐揚げを頬張った
「なぁチャンミン···今日泊まってく?」
美味しそうに頬張ってたチャンミンがフリーズして俺をジッと見つめる
「泊まってけよ」
「僕···明日学校···」
「分かってるよ···俺んとこから行けばイイじゃん」
「でもさ···人数は一人で取ったでしょ?」
「ホテル?」
チャンミンは頷く
「当然二人で予約してる」
「ドヤ顔が凄い」
そう言ってチャンミンはクスクスと笑っている
「じゃあ自宅に荷物取りに寄ってからホテル行くね」
「俺も一緒に行くよ」
チャンミンは首を左右に振る
「ここから少し距離あるしユノは先にホテルで休んでて」
「ん~···わかった···ホテルはここな」
チャンミンにホテルの情報をLINEで送ると確認したチャンミンは目を見開き俺を見つめた
「こんな高いホテル泊まった事ないよ···」
そう呟くチャンミンの頭を俺はポンポンと優しく撫でる
「ホテル着いたら連絡な···ロビーまで迎えに行く」
「うん」
「じゃあ食べちゃおう」
俺はチャンミンの皿に唐揚げや焼きそばを盛り付け始めた
どんどん盛り付ける俺の手にチャンミンはクスクス笑いながらそっと触れた
「僕ばっかじゃん···ユノも食べてよ」
「俺?···なんか胸いっぱいで」
「え?」
俺はキョトンとしているチャンミンを見つめる
「言っただろ?···会えて嬉しいって」
チャンミンの頬が赤く染まっていく
「頑張って食べて」
「頑張らなくても食べれる量だし」
そう言ってパクパクと食べ始めた
あっという間に平らげるチャンミンが可愛いし可笑しいし俺は思わず仰け反りながら大笑いした




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