16.



「社長···ドンヘ弁護士がお待ちです」
「うん···ありがとう」
部屋に入るとドンヘが落ち着かない様子でウロウロと歩いていた
「あ···ユノ!!」
「どうした?」
ドンヘのウロウロが気になる
「取り敢えず座って」
ドンヘは椅子に座ると俺を見つめた
「で···どうした?」
「ユノさ···モモさんとまだ連絡取り合ってたりする?」
「ん?···まぁ」 
「彼女とは派遣で知り合ったって言ってたよな」
酔ってたのに覚えてたのか
「それがどうした?」
ドンヘは俺を見つめると何か言おうとして言葉を呑んだ
「ドンヘ?」
「ユノ···よく聞けよ」
「もったいぶってる感が凄いんだけど」
俺は苦笑いしながらドンヘに言う
「あの人···スパイかもしれない」
「は?」
何を言い出すかと思ったら···チャンミンがスパイ?
「スパイって···意味わかんないんだけど」
ドンヘの表情からすると冗談で言ってる感じじゃない
「何処のスパイ?」
「もちろん会長の会社のスパイだよ」
俺は笑いながら首を左右に振る
「スパイな訳ない」
笑ってる俺とは対照的な表情のドンヘ
「モモさんはシウォンの女なんだよ···
ユノがパートナーを捜してるってのを知ったシウォンがモモさんをユノに近付けた」
ドンヘは俺とチャンミンの出会いが派遣じゃない事を知らない
「情報をシウォンに提供し会長へ流してたに違いない···
だから救済してくれそうな企業を未だに探してるんだよ···それに···」
ドンヘは俺を見つめる
「買収しないようにお前に言ってるからお前が乗り気じゃないんだろ···女って怖いよな」
ドンヘの言葉に俺は首を振る
「ドンヘ···モモからそんな事を言われた事もないしそんなタイプでもない···何でこんなこと言い出すんだよ」
チャンミンに対しての印象がまるで変わってしまってる
ドンヘが怪しいと思いだしたのは何故なんだ···
「なぁドンヘ···三人で食事したあの日そんな事思ってたのか?」
ドンヘは黙って俺を見ている
「モモの様子を探る為に一緒に食事した···そういう事だったって言うのか?」
ドンヘは携帯を取り出し俺に写メを見せた
「あの時はそんなこと思ってなかったよ···たまたまなんだけどさ···今日見たんだ」
写メには笑顔のチャンミンが写っていた
そしてシウォンとキュヒョン···
「俺さ···今日この店でランチしてたんだよ···
モモさんって目立つだろ?···店に入って来た瞬間モモさんって分かった」
ドンヘは写メを眺めながら話を続ける
「モモさん誰と来てんのかなって連れを見たらシウォンだろ?···凄く親密そうな感じで個室に入ってった」
そう言うと写メから俺に視線を移す
「あ···そういう事かって」
ドンヘの表情は真剣
「お前···利用されてんだよ」
「それはない」
俺は即座に否定する
「断言できないだろ···彼女の素性を調べてやる」
「ドンヘ」
「買収が失敗したらどうすんだよ!!」
苛立ったドンヘは俺にそう言って席を立ち部屋を出ようとする
「彼女とは派遣で知り合ったんじゃない···」
俺の言葉にドンヘの動きがピタリと止まった
「派遣じゃない?」
俺は黙ったままドンヘを見つめる
「ユノ···どういう事だ」
俺の脳裏にチャンミンの顔が浮かぶ
「たまたま出会った娼婦だ」
「何て言った?」
ドンヘは俺を見つめながら近付いてくる
「スパイじゃない···彼女は娼婦なんだ」
俺の言葉にドンヘは半笑いしている
「娼婦?···へぇ~···娼婦なんだ」
「だから···スパイなんかじゃない」
「分かった分かった」
クスクス笑いながらドンヘは再び部屋のドアの方へ向かう
「後で俺にもモモさんの連絡先教えろよな」
そう言ってドンヘは出て行った
部屋には俺ただ一人
あのドンヘの反応に溜め息しか出ない
言いたくなかった···
「ふぅ~···」
凹んでる俺の携帯が振るえ画面を確認するとチャンミンだった
«さっきはありがとう···夜は一緒に食べれそう?»
楽しそうに食事をしていたチャンミンの顔が浮かぶ
«あぁ···一緒に食べよう···予約しとくな»
返信すると直ぐ既読になり«嬉しい»って言葉と笑顔のウサギのスタンプが送られてきた
俺はホテルに電話してホテル内にある日本料理店を予約すると明日発表する書類の詰め作業を部下に命じた
「社長···方向転換した件をドンヘ弁護士はご存知なんでしょうか···」
不安そうな部下に俺は微笑む
「まだ言ってないけど何も心配いらない···アイツにはちゃんと報酬を支払う訳だしね」
俺はそう言うと既に出来上がっている種類や次に買収を行う会社のリストに目を通し始めた
ふと腕時計が視線に入り時間を見て少々驚く俺
「ギリギリじゃん···」
日本料理店を予約した時間も迫っていて急ぎ気味で帰る支度をしホテルへ向かった
「チョン様···お帰りなさいませ」
テミンが俺に気付いて荷物を引取る
「モモ様がお待ちですよ」
ニコニコしながらテミンは俺に声を掛けてくる
「テミン···何か良い事でもあったのか?」
テミンは嬉しそうにウンと頷く
「最近モモさんと会話が出来るようになったんです···もう嬉しくて」
嬉しそうに話すテミンが可愛い
「«テミナ»なんて呼んでくれるんです」
「良かったな」
話している間にエレベーターは最上階へと到着
「テミン···いつもありがとな」
テミンから鞄を受け取るとテミンが一礼しエレベーターのドアが閉まった
部屋に入るとソファで雑誌を読んでいるチャンミンと目が合った
「ユノお帰り」
チャンミンの優しい笑顔が今日の俺には辛い
「ユノ?」
チャンミンがソファを離れ俺の前に立って様子を見ている
俺はチャンミンを引き寄せ抱きしめた
「ただいま···」
チャンミンを抱きしめながら言うとチャンミンの腕が俺の背中に回る
「無理してお店来てくれたもんね···疲れちゃったね」
俺の背中を優しく擦りながら話すチャンミン
«キュルルル···»
そんなチャンミンのお腹から空腹を告げるサインが鳴った
身体を離しチャンミンと視線を合わせると同時にクスクスと笑い合う
「待たせたな···食べに行こうか」
俺の言葉に頷くチャンミン
部屋を出て日本料理店へと向かった



※次回の17話はBL表現ありかもです
そうなった場合は念のため限定記事にしますのでお読みになる場合はアメンバー申請お願いします
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