高校進学といえば必ず出てくるのが中学の「内申書」。昔は入試50%、内申書50%で評価し入試の判定をしていました。現在では入試の比率が高くなる傾向で、入試:内申書=60%:40%、入試:内申書=70%:30%等のパターンが増えているようです。そして、その内申書の原簿となるのが「指導要録」です。
 かつて、高校進学時の「内申書」を公開せよ!という裁判があり、その原簿である指導要録が本人が希望すれば公開されることになりました。
結果として、20年保管だった指導要録は5年保管となり、成績証明、いわゆる内申書は卒業後5年しか発行されなくなってしまいました。その後は、卒業証明しか発行できないということになります。

 ①内申書には何が書かれているのか。

 内申書には成績や出席状況、部活の所属や特技などが書かれているだけです。
中学3年の2学期の成績、あるいは中学3年の1~2学期の成績のトータルのどちらかが5段階で付きます。
昔は比率が厳密に決められていて、「5」と「1」は7%、「4」と「2」は21%残りが「3」となり、人数が合わなければ教育委員会から差し戻されました。現在ではそこまで厳密ではなく、上記比率よりにさらに数%上に偏った形でつけることが多いようです。
 基本的に悪い情報は書きませんが補導暦や保護観察処分を書くかどうかは確認していません。普通、万引きや暴力事件でも処罰や裁判になることは少ないので、たぶん、書かれていないと思います。ただし、そういう生徒は出席率が悪い場合が多く、それは内申書に書いてあるので、その辺で高校側にバレます。

 ②指導要録には何が書かれているのか。

 指導要録には年度末の成績が付きます。記入も春休み以降になるので、内申書の成績と異なることがあります。卒業後に成績証明を出してもらうと、中学3年の内申書と違う成績が付く場合もありえますが、1年分のトータルなので、1段階上がるか下がるかといった程度です。
 部活や出席状況、委員会活動なども記入します。補導暦や保護観察処分も書いてあったように記憶しています。
 たまにではありますが、中学に成績証明や推薦状を求めてくる卒業生がいます。指導要録を見ながら、成績や出席状況はそのまま書きますが、その他の情報は状況によりけりでしょう。基本的に都合の悪いことは書かないと思います。

 以上は、整理のお手伝いや成績原簿の読み上げ(成績記入データの確認作業)等の中で指導要録を見たり、学校推薦決定の会議、教員間の話で聞いた情報です。私は担任がなかったので自分で内申書と指導要録は書いていません。

 ③高校は何を見ているのか

 高校側は基本的に内申書の成績のみを見ているようです。刑事事件でも起こしていれば別でしょうが、最近は定員割れで全員合格も多く低い成績でも問題ない場合も多いようです。あとは、内申書と試験の成績が極端に乖離している場合はまずいかもしれません。
 推薦の場合は、前もって「27で大丈夫ですか」・・(9教科の5段階成績の合計)等と高校側に問い合わせ「大丈夫でしょう」あるいは「難しいでしょう」などと答えをもらっているので、3社面談で志望変更を求められた場合には高校サイドから言われている可能性が高いと思われます。
 それから、高校側で気にしているのは学校間格差です。同じ「3」でも学校によって点数が違うので高校側の「内申書格差補正」が難しいようです。

 ④先生に逆らうと内申書の成績を下げられるのか

 この手の質問をよく受けるのですが基本的にありえません。担任は生徒の進学を決めるのが仕事であって、気に入らない生徒であっても成績を下の方に操作することはありません。そんなことをすれば。「進路が決まりません」といって生徒がやってきて、3月末になっても嫌い?な生徒と付き合う羽目になります。

 担任がいろいろ言う場合には、

・無理して高いレベルの学校にいっても卒業できないと担任が思っている
・高校側から『この成績では合格できません』といわれている
・過去に同じような成績、態度の生徒が不合格、中退になっている

等の理由が考えられます。

 昔よく言った偏差値教育なんてもともとないし、「現在の成績では」どうなるかを毎年説明するのが進路指導ということになります。
それから、勉強すれば成績は上がるのかどうかということについては回を改めて。

参考
http://www.ichinoseki-net.jp/oyaji/keyword/yoroku.html
http://www.shoyo-h.metro.tokyo.jp/sotugyousei/jimutetudukikikan.pdf

※ ここに出てくる「昔」とは基本的にバブルからバブル崩壊後の数年の頃をさします。