「私…好きな人ができたの」
不安げな顔をした友人が私に話しかけてきた。
聞くと、学年一人気の高い男子に恋をしたとのこと。
みんなから人気の男の子。
はっきり言って、多分その恋はかなわないだろう。
「やめときな。」
私がそう言った二日後、友人は告白して振られた。
止めはしたものの、友人のそういうまっすぐなところが好きだと思った。
「好きな人がいるんだって…」
断られた理由はシンプルだ。
潔い良いというかなんというか、はっきり断られたのは良いことだ。はぐらかされて遊ばれでもしたら私が黙ってない。
学年一人気の高い彼は、私の幼馴染だった。
高校になったタイミングで話すことは少なくなったが、すれ違えば挨拶をする程度の仲ではあった。まぁ大きくなれば正直そんなもんだろうと思った。
それから約2年後。
高校を卒業する頃、私は彼に告白された。
別々の大学に行くことになったので、意を決して告白しようと思ったとのこと。
なるほど、好きな人ってのは私のことだったのか。
うーん、なんとも複雑…
「ごめんなさい。」
彼にそう告げると理由を聞かれた。
私の答えは
「好きな人がいるから。」
私は女性を好きになった。
太陽のような友人と過ごす度に、友情とは別の感情があることに少しずつ気付いていった。
しばらくしてそれが恋かもしれないと思った。そんなわけない。私が女性を好きになるなんて。悶々としながら否定と疑問を繰り返し、ベッドの中で泣いている自分に気付いた時、これは恋だ、と納得した。
私が好きな人は、私を好きな人が、好き
この小さな三角形の社会は、想いを伝えることで巡るのだろうか。
巡ればまたなにか変わるのだろうか。
2年前のあの日。
私の好きな人は、私の幼馴染に告白し、振られた。
泣いて苦しむあなたを見て、泣けない私は苦しんだ。
あの日の帰り道を私はずっと覚えている。
あの日があるから、私にとってあなたは『想い人』のまま。
あなたはまだ、あの時のままだろうか。
「はー泣いた泣いた!振られちゃったけど、まいっか!」
「前向きだね。きっと…もっといい人がいるよ。」
「まぁね。」
「うん、案外すぐ見つかるかもよ。」
日の入前の夕焼けが眩しい。
アスファルトに伸びる2つの影を見て、なんだかドキドキした。
しばらく雑談をしながら歩くと、突然友人が切り出した。
「なんかさー『想い人』ってよく言うじゃん?」
「好きな人のことでしょ?」
「そうそう、もし私が誰かの『想い人』になれたらさ、私は『想われ人』ってことじゃない?」
「…うん。」
「それって素敵なことだけどさ、『想われ人』であることに気づけないんだろうね。」
「…伝えなきゃ、わかんないよね。」
日が落ちてどんどん暗くなる。
住宅の灯りが夜を照らしていた。
「伝えられた方が幸せ…なのかな。んー…』
「…さぁ。」
「いやダメだな…もし告白されたら今の私に断る勇気はないや。」
「…どうして?」
「振られた気持ちを知っちゃったからさ、私を好きな人にこんな想いさせられない。」
「…」
まっすぐ遠くを見つめていた友人は、今度は空を見上げた。
私も空を見た。
沈んだ太陽は、今は月を照らしている。
「だったらずっと、『想われ人』でいたい。」
「…そっか。」
静かに輝く満月を見て
今日も月がきれいだな
と想った。
ーおわりー
著:ことほ