読売文学賞の受賞者が決まりました。

きょうから、「読売文学賞の人びと」として、
シリーズで連載されています。

おひとりめは、高村薫さんでした。
受賞作は「太陽を曳く馬」

わたしも高村さんの小説のファンです。
「マークスの山」の合田雄一郎刑事が、
毎日、白いスニーカーを洗う場面、
「レディジョーカー」の競馬場の場面、
こうして、
読みなおさなくても鮮やかに思い出せる、
人物と状況設定が素敵なんですよね。

受賞作品は、
「圧倒的な迫力」「冗長で退屈」と、

選考会の評価が割れたそうです。
それを踏まえた、

著者のインタビューを抜粋します。

読者に伝わるか葛藤はあった。
世間には二つの事件のように
(しまぬき注:阪神大震災と2カ月後のオウム真理教のことか?)
法律や宗教、哲学の専門家でも、
意味や背景を的確に言い表せない出来事がある。
様々な分野の言葉から漏れ落ちてしまう現にある出来事に、
小説の言葉で迫りたかった。



ぐちゃぐちゃ言わずに生きればよい。
三部作を書き終え、
ようやく楽天的な場所に来ることができた気がします。
人間は生きていることの意味を問い続けることで、
人であり続ける。
問い、書き、新しいことを始める衝動から私は、
死ぬまで逃れられない。


高村さんの本作のなかで、
難解な宗教論、美術論、
オウム真理教について、
登場人物が延々と議論を戦わせているそうだ。

ひとりの作家の内部で、
現に起こっている、すさまじい議論、
すさまじい葛藤だ。

反対意見や疑問を投げかける、
「もうひとりの自分」なら私にもいると思う。

しかし、
異なる教義を、
それぞれ論破する自分がいたとしたら、
それはしんどいと思う。

かくも、
「一つの答え」を出すことは難しい。

ハウツー本も必要だけど、
わたしは小説を読みたいなぁ、
と思うのは、こうした理由からです。

問い続けるからです。