軽々しく『死にたい』を口にする人を目の前にして
その言葉を流すことが出来なかった。
相手はお客さん。
ふつーーなら流すよね。
お客さんだもの。
『お前の仕事は何や?』
そんな問いが聞こえてきそうだ。
それでもね、流せなかった。
病と闘いながら最後の最後まで必死で生きることを望んでいた友がいた。
《娘の成人式、見れるかなぁ》と寂しげにつぶやいたその顔が浮かんだ瞬間
かなり語尾は強めに
「そういうの、めっちゃ腹立つ」と言い放っていた。
いつもの私なら流せたのだろうか?
個性心理学でも虎キャラの私は
『言葉が流せない』の説明文に釘付けになっていたことを思い出した。
自分の中で、スッと素早く光が走り去るように
流せたら良かったのにね。
『視野を広げて、どっしりと構える』をテーマにした下弦の月を前にして。
まったくもって、視野が狭くなっている。
『そういうとこ、相変わらずだよね』と彼女は笑うだろうな。
相変わらずだよ。
まだまだ修行が必要だわ。