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読書感想文

8月も今日までですね!!!

皆さんは読書感想文は書き終わりましたか!?


『時刻表』を読んで

四年三組十番 禾重木寸 光

 今年の夏はつまらなかった。
 夏休みには家族で旅行に出掛けるのが恒例だ。だが、今年は弟が足の骨折で入院したために、家族旅行は中止となった。骨折をした弟を一人病院に残し、家族旅行なんてできないのは理解できる。
 しかし、夏休み早々に、調子に乗って木に登り、転落した弟の間抜けぶりを許す気にはなれなかった。
 高校野球が始まったころ、いとこが遊びに来た。某大学の学生なのだが、彼女と遊びに行くよりも、列車に乗っている方が幸せな"鉄"と言われる人種だ。世間一般のイメージ通り暑苦しい。夏には遠慮して欲しいタイプだ。そのいとこが、
「今年は弟がけがをしたから、家族旅行が中止になったんだって?それじゃこれでも読んで旅行した気分を味わってくれ」
と言って、一冊の分厚い本、いや、雑誌のようなものをくれた。表紙には『時刻表』の文字があった。いかにも"鉄"らしい贈り物だ。あまりのストレートさに、ある種すがすがしさを感じてしまった。
「これ一冊あれば、日本全国どこにでも行けるんだ。これを見ているだけで、旅行をした気分になれるんだ。楽しいぞ!」
 それからはいとこの独壇場となった。時刻表と鉄道旅行の魅力を語るだけ語って、気が済んだら帰っていった。
 時刻表をもらってもなぁ、正直な気持ちだった。コミックの新刊の方がよほどうれしいのに。しかし、いとこの厚意を無にするのも悪い。どうせ暇なのだからと、ぱらぱらと『時刻表』をめくってみた。
 最初に目に留まったのは路線図のページだった。けっこうな路線があるもんだと、妙に感心してしまった。北海道から鹿児島まで、指でなぞってみた。そのルートは一つだけではなかった。いくつもの行き方がある。日本海側を回るコース、太平洋側を行く路線、それに、山の中を走っていくこともできる。
 知らない路線もたくさんあった。乗ったことのない路線も多かった。自分が乗ったことのある路線なんて、ほんのわずかでしがなかった。
 路線図を指でなぞっているだけなのに、なんだかワクワクしてきた。実際に旅行に行っているような気分になってきたからだ。路線の光景を想像するだけでも楽しかった。
 よし、北海道から鹿児島までどのくらい時間がかかるか、時刻表で調べてみようと思った。飛行機も新幹線を使わない、特急も使わない、すべて普通列車で行ってみたら……。出発は日本で一番北にある駅、宗谷本線の稚内駅だ。出発時間は意外にも早く、六時二十四分だ。次の列車は、十時五十一分。これならば朝ご飯を食べてゆっくり出発ができる。これにしよう。しかしまてよ、こちらに乗ると、六時二十四分発の列車で最終の駅となる長万部に到着するのは翌日になってしまう。六時二十四分発の列車じゃないとダメじゃないか。ほかにルートはないのか、時刻表の数字とにらめっこが続いた。
 時刻表に不慣れなせいもあったのだろう、北海道を脱出するまでに、二時間もかかってしまった。
 時刻表って、意外に面白いかも、そう感じた。目的地は一つでも、行き方はいくつもある。当たり前のことだが、一つの発見だった。
 続きは翌日に行った。日本海側のルートを選ぼうか、それとも太平洋側で行こうか、JRばかりじゃなくて、私鉄も使ってみたらどうだろうか……。
 路線図でルートを選び、時刻表でどの列車に乗るか決める、こんな作業が延々と続いた。
 最北端の稚内駅から最南端の西大山駅まで、普通列車の旅だと、最短で五日かかる。景色のいい路線を利用したり、おいしい駅弁を食べたりするために寄り道をすると、それ以上かかる。
 飛行機を利用すれば十時五十六分に稚内駅を出発して、その日の二十時七分には西大山駅に到着する。所要時間は九時間十一分だ。およそ十分の一の時間で到着できる。
 だが、それで楽しいのだろうか。景色をほとんど見ることなく、おいしい駅弁も食べることなく、ひたすら効率だけを求めて……、そんな風に考えてしまっていた。
 今年の夏はどこにも行けなかった。だが、時刻表に出会えたおかげで、日本全国いろいろな所に行けた気分だ。知らない路線、知らない駅、そして知らない町へ思いを巡らせた。『時刻表』をプレゼントしてくれたいとこには感謝したい。
 だが、ここまで時刻表にはまるとは、
"鉄"の素質十分なのかもしれない。そのことに関しては、将来への不安を感じてしまう。


時刻表