わたしの畑の脇を、馬運車のグラスワンダー号が走って行きました。

グラスワンダー。
史上最強の世代といわれた平成7年生まれのサラブレッド、
始まりはアグネスワールドだった。
世代の新馬勝ち第1号となった彼は、レコードで函館3歳Sを圧勝、
その時点で朝日杯3歳Sは当確といわれていた。
しかし、秋、9月の中山からかつて無い圧倒的な力を示す驚異の外国産馬が登場する。
新馬戦出遅れながら3馬身の差を付けて勝ったその馬・グラスワンダーは、
続く東京のアイビーSで、長い直線苦もなく坂をまっすぐ駆け上がり、
上がり34秒0、5馬身もの差を付けて圧勝した。
さらに、重賞初挑戦となった京成杯3歳Sではさらに差を広げる6馬身。
走るたびに差を広げていくその姿に、
これまでは比較されることさえなかった伝説の名馬の名が上がった。
マルゼンスキー。8戦全勝でつけた着差の合計63馬身。
まるでマルゼンスキーのような、
いや、あるいはマルゼンスキーより強いかもしれない。
朝日杯3歳Sは目の前に立ちはだかる敵との対戦ではなく、
マルゼンスキーに挑戦する舞台となった。
 函館チャンピオンのアグネスワールド、
京都3歳Sのフィガロ、マイネルラヴと素質馬の揃った中、
上々のスタートを切ったグワスワンダーは、
他の馬の邪魔がないよう馬群の外外を進んでいく。
マウントアラタがハイペースでぶっ飛ばす中、
第3コーナーを回ったところで外外をグラスワンダーが進出してきた。
そして第4コーナーを大外で回り、前脚を水平よりも高くあげ、
そのまま大地に叩きつける独特の走法で一気に全馬を交わし、
マイネルラヴ、フィガロらが懸命に追ってくる中悠々とゴールへ飛び込んだ。
薄曇りの中山競馬場の掲示板に赤くレコードの文字が点灯する。
1分33秒6。リンドシェーバーの1分34秒0を破る破格のレコード。
マルゼンスキーの再来。
問答無用の圧倒的な強さは、希代のスターホースの誕生を確信させた。