ずっとずっと昔

 

広大なレンゲ畑で、親戚の子と遊んだ

 

70年もの昔の記憶

 

きっと、それ以来なのかと思う

 

一面に広がる同種の花、同色の花々

 

晴天の空、誰かに何処かに

 

誇るかのように、生命の瞬間を誇示する

 

そんな風景が好きだ

 

 

 

 

染井吉野にしても

 

好きな大島桜にしても

 

薄桃色の花々、白色の花々

 

風に揺られ、ほんの少しの緑の葉

 

満開を過ぎ、花びらが、散ってゆく

 

住まう地の川面に散ってゆく

 

やっと来た春が逃げてゆくような

 

そんな瞬間が好きだ

 

 

 

 

もう少しで、春の団体が押し寄せ

 

寒さで震えた時期から解放させてくれる

 

いつだって、春の到来は

 

桜と共にやって来る

 

 

 

 

両脇に桜の樹を抱えながら川は流れ

 

待ちあぐね、蕾が下を向く

 

まだまだ、この地では、春が待機中

 

 

 

 

胸につかえた不安を

 

春吹く風が一掃してくれるのだろうか

 

何年も何年も、苛まれ押し潰されてきた

 

自尊心を

 

取り戻せるのだろうか

 

 

 

 

この春で

 

解放された自分になれるのか

 

押し寄せ、花ひらく、染井吉野から

 

冷たく、澱んだ冬を

 

いったいに、吹き飛ばしてもらえるものなら

 

この春を、新しい展開を、信じたい