罪の声塩田武士

ジャンル:ミステリー

 

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

テンポ7.5、プロット7.5、ストーリー性7.5、展開7.0、人物描写8.0背景描写8.0

空気感8.0、ミステリー7.5、ドキドキ感7.3、伏線7.0、読後感7.0

 

    

~ 解説 ~

グリコ・森永事件をモチーフにしたフィクションではあるが、最後に記載された作家のコメント

  『作中の犯人は「フィクション」だが、各事件の発生日時、犯人による脅迫状・挑戦状、

  事件報道は「極力史実通りに再現しました」』

の通り明らかに、闇に埋もれた事件を解明したノンフィクション作品であり、多くの賞を受賞した大作である

 

~ 作品につい ~

調査には恐ろしいくらいの時間と手間と暇を掛けたであろうことが、読んでいてもありありとわかる。

 

途中まで、具体的には主人公の記者阿久津が、犯人と出会うまでは、それこそ緊迫感に満ち溢れていて、読む手が止まらない。

 

が、犯人から語られる事件の全容が明きらかになるや、その時代背景や経緯、犯人グループ内部での葛藤や錯誤が、所詮単なる犯罪者が計画性したこの程度ものなのかと。

 

戦後最大の未解決事件とは言いながらもそれが偶然や運も重なったのか、その程度しか捜査できなかった警察のレベルなのか、少なくとも作家の手では如何ともし難い陳腐な事実に、作家でさえ最初の意気込みが後半ペースダウンしてしまったと感じざるをえない。

 

~ 読後感 ~

テーマはは確かに誰もが知る未解決な大事件なれど、ふたを開けてみれば所詮金目当ての犯罪者が引き起こした事件でしかなく、時の警察やマスコミが煮え湯を飲まされながらも解明できなかったが為だけに、いまだに語られている自己満足な題材でしかない。

 

そうしてこの題材を実際的にはノンフィクションとして作品にしようとしたこと自体で、既に作家はそのストーリーや結末を変えることは出来ないのだとすれば、この作品に作家の想いはない。

 

ジャーナリストが作家として転身する中途半端な過渡期に作った、奥深さも感慨も感傷さえ湧かない事件であり作品であり、それを手に取ったわたし自身も同じく低俗なのかもしれない。

 

追記)もう一つの大事件とされている3億円事件にしても 事実はこのようなつまらないものなのだろうとしみじみと感じた次第である。 了

 

 

<評価の説明>

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい