きみはいい子;中脇初枝
ジャンル:文芸
★★★★★★★7:秀作、十分に楽しめる作品
テンポ7.5、プロット7.5、ストーリー性7.5、展開7.0、人物描写8.0、背景描写8.0
空気感8.0、ミステリー7.5、ドキドキ感7.3、伏線7.0、読後感7.0
~ 解説 ~
スタイルとしては連作短編とはなっている。
「連」については、5つの家族に起こった小さな出来事が同じ街で起こったというだけで、それ以外には大したつながりもないので、連作としては期待しない方がいいかもしれない。。
ストーリーとしては、ふとしたタイミングで垣間見てしまった他人の家庭、そこにはひとつやふたつは他人に知られたくない暗い部分がある。
たいていの他人は素通りするどうでもいいようなことを見て見ぬふりが出来なかった他人が起こす小さなやさしさや親切が家族を救う事もある。
どうでもいいような、しかしどこにでも転がっているような家族の問題に光をあてて、やさしい他人たちがやくおせっかいの物語のとなっている。
~ 作品につい ~
「サンタさんの来ない家」は、
虐待されている子供を 俯瞰的にみるやる気ない教師が、この子と関わっていくうちに
徐々に変化すしていく。
「べっぴんさん」は、
祖母から極端に厳しくしつけられた娘が母になった時に、自分が娘にどう接するのかを
ママ友から見た視点で語られる。
「うそつき」は、
虐待されている息子の友人と息子の関係性を見ながら、自分の過去にいた友人の事を
思い出す父親のはなし。
「こんにちは、さようなら」
よくすれ違い際にお婆さんに挨拶してくれる少年、たまたま係わった女性がこの少年の
母親であるとわかった時に芽生える関係を。
「うばすて山」は、
ぼけた母を介護施設に預かる準備のために妹から一時的に預かる事になった姉は、
母が自分には厳しく妹には優しかったことを思い出しながら数日間を過ごす。
~ 読後感 ~
病気、赤ん坊、貧困、虐待、介護、シングルマザー、などどれもがどの家庭にあるかも、また将来起こりうるかもしれない問題でありながら、他人にとっては係わりようもないし係わりたくもない事に関わってしまった他人がほんの少しだけ見せる優しさ。
時にこのほんの少しが、溺れているヒトからすれば命をつなぐようなを大事じなる事もある。
もしあの時あの人に出会えなければ どうなっていたかわからい、そういう小さな奇跡が詰まった作品集となっている。 了
<評価の説明>
★★★★★★★★★★10:超傑作、もう神の域
★★★★★★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊
★★★★★★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊
★★★★★★★7:秀作、十分に楽しめる作品
★★★★★★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品
★★★★★5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル
★★★★4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・
★★★3:失敗作、読む価値なし
★★2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル
★1:ゴミ、即破棄してもいい