迷路館の殺人綾辻行人

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

   テンポ;8、プロット;9、ストーリー性;9、人物/背景描写;8、発想:9、空気感;9、

   ミステリー/サスペンス性;9、伏線;9、ドンデン返し:10、読後感;9

ジャンル:ミステリー、新本格、密室、シリーズ化

 

 

~ 前置き ~

ここ最近は、この作家 綾辻行人にドハマりしてしている。

 

この傾向は残念ながら当面も続くであろう様相が濃くなり、積読も10冊を越えて順番待ちとなってきた。

 

今回紹介する作品は『館シリーズ』という、作家の代表的シリーズの第三弾となるのだが、前作第二弾「水車館」が、下馬評ではシリーズの中では比較的低い評価であったにもかかわらず、個人的には第一作でデビュー作の「10角館」を越えるぐらいのクオリティーであった為、何を見ても高い評価の 今回の第三弾「迷路館」の期待は大きく膨れあがった状態であったため、おのずとハードルは高くなっていた。

 

~ 作品の概要 ~

ストーリーの概要は、天才建築家 中村青司の建てた館で殺人事件が起こる事と、寺の三男でフリーターで自称探偵の島田潔が毎回登場することは 共通ルールで今後もこれだけは変わらないであろう。

 

そうして今回の「迷路館」の持ち主は、ミステリー作家の大家であるが、癌に侵され隠遁するために丹後にこの館を作り、移り住んでいる。

 

そこに彼の還暦を祝うために、彼を慕う4人の新人/中堅作家や身近な編集者や評論家などが招待されて集まってくるところから物語はスタートする。

 

そうして呼ばれた迷路館は、平地に大岩のような入り口だけがぽつんとあり、迷路を施した居住空間は全て地下に収まっているのだが、もうこの最初の数ページだけで既にストーリーに惹かれてはまり込んでいる。

 

                

 

本格推理小説なので有り得ないような設定にすることも可能であり、要は作中に書き記された内容だけで真実が導き出せるかだけが絶対条件となる。

 

この真実を伏線隠すために作家は、様々なトリックを使って最後まで敵(読者)の目を欺くことになるのだが。

 

当作品は、事件が解決した数か月後に、事件の関係者がその時のことを思い起こすような形で出版した作品を読者にも読ませる、「作中作」の形態で進んでいく。

 

通常の作品では、事件の起こり方が同一犯である事が前提で一貫性のあるワンパターンであることが多いのだが、この作の特徴は とにかくそのトリックがバラエティに富んだでいる。

 

密室であることは勿論であるが、それ以外に ダイイングメッセージや消失、誤認、叙述など、ミステリーのトリックオンパレード状態で、次々と繰り出されるそのスピード感は半端ない。

 

この複雑に絡み合った 地下の館で発生する事件が誰が何の目的で起こしたものなのか、もしかすれば意外と早い段で想定ができるかもしれないのだが・・・、もちろんそれだけでは終まないところにこの作品の凄さがあるのではないかと(笑)。

 

~ 読後感 ~

と ここまでは良い点を並べ連ねた。

もちろん論理的な部分で、それはなぜトリックがバラエティーに富んでいるのかという理由づけのみを見ても、破たんすることは全くなく、ストーリーの展開には間違いなく引き込まれる。

 

ただ、無理にいちゃもんをつけるとすれば、

文庫でページ数が360頁と決して薄っぺらいモノではないし、ミステリーとして謎解きを主に考えるのであれば不足はない。

 

が、さらにストーリーを重視するのであれば、ストーリーの背景や登場人物の描写にページを割けば 物語のストーリー性がさらに深まったのだろうと、しょうしょうもったいなかったかと思えるくらいまとまった傑作としかいいようがない作品となっている。 

 

 

<評価の説明>

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい