室町無頼:垣根涼介

★★7:秀作、十分に楽しめる作品  

   プロット;7、ストーリー;7、描写;6、テンポ;6、発想:7、空気感;7

   ミステリー:7、サスペンス;6、ドンデン返し:5、読後感;7

ジャンル:歴史、ハードボイルド

 

感想:

物語の時代背景は室町、その中期から後期にかけて主に京都が舞台となっている。

 

表題の無頼という言葉、最近ではほとんど使われなくなった言葉だが、戦後では無頼派という反俗、反権力、反道徳言動などを掲げた作家集団がいたが、この作品の表題にある無頼もそうで、大部分の主義主張のない下等ないわばやくざ者とかならず者の無頼のなかにも、ひときわ飛び抜けたものがいる そんな無頼達の話しではある。

 

彼らがどのような経緯で無頼となったかというとそれは万別であるが、中には武士の家に生まれながらに主家が没落したり取り潰されたりしたことで、浪人や遊女になったものも多くいた。

 

そんなもの達の一部は、心の奥底に矜持を持ちならがも ただただ武芸に励むことで力を見出すものも現れる。

 

 

当作品は、一般的には寛正の土一揆とも徳性一揆とも呼ばれる、要は政府にクーデターを企てたもの達の物語である。

 

 

 

 

ひとりの食い詰めた若者で主人公の才蔵が、金貸しの僧兵に用心棒で雇われる。

 

が、あるときその金貸し屋が、盗賊団の襲撃に合う。

 

一命は助けられるのだが、その長が盗賊でありながらも治安を維持する目付職についているという界隈では名の知れた骨皮道賢。

 

この道賢と出会うことで、才蔵の人生は大きく変わっていくことになるのだが。

 

 

 

ただ、クライマックスになるまでの時間が長い。

 

確かにその長さが最後の怒涛の迫力を持たせるたに必要だったのかもしれないが、それにしても。。。

 

読み終えてしまえばそれなりにまとまった、ひとが生を受け生きていくなかで大きく舵を切るときには、そこはかとない人との出会いや努力、運などが必要なものである。

 

その困難さを訥々と描き切った作品であるため、とはいえ・・・、長かった

 

 

読み終わってからのち調べてみると、意外とと云うべきなのか多くが史実に基づいているのには驚いた。

 

前出の骨皮道賢はもとより、蓮田兵衛や馬切衛門までもが実在の人物であったとは。

 

とにもかくにも、垣根涼介という作家の作る作品は、時代が現代であれ歴史時代であれ、硬派な男を描く ハードボイルド作品と云えるのではないだろうか。 了

 

 

室町無頼 室町無頼
1,836円
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<評価の説明>

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい