光秀の定理:垣根涼介

 

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

   プロット;8、ストーリー;8、描写;9、テンポ;8、発想:8、空気感;8

   歴史ミステリー:8、サスペンス;7、ドンデン返し:8、読後感;8

 

ジャンル:歴史ミステリ-

 

感想:

ハードボイルドとか、冒険もの小説としては、既に完成された作家が手掛てた歴史作品とはどういうものなのか、期待半分で手に取った。

 

結果、いい意味で 過去の作風を継承しつつ歴史ものへ転嫁されたという感じ。

 

具体的には、前半は兎に角 その人物や背景にこだわり深く追及し、中後半はその人物が一人歩きしてストーリーを作っていくという感じで、一気に加速する。

 

 

というわけで、当作品は題名の通り明智光秀であり、彼を語る上で、いやがおうにも「本能寺の変」は避けられない。

 

それは、当作品もおなじで 最後はやっぱり「本能寺」ではある。

 

が、そこに至るまでの過程が、過去様々な作品では、光秀や彼の周囲の状況から、その変の発生原因を追究するものが多かったのに対して、当作品ではそれを光秀の人仏像から類推していくのである。

 

 

前半は、光秀の浪人時代で語られる。

その時に出会う 2人の架空の人物、ひとりは破戒僧 愚息、もう一人は剣術家の新九郎たちとの交流から、彼の人間性や思考のイメージが固まっていく。

 

そうして、織田家仕官するあたりからで、クラッチが入り作品のスピードが加速していくわけであるが、この織田家仕官後でも ストーリーはどちらかと云えばマイナーな、観音寺城の戦いという六角氏攻略がメインテーマである。

 

その戦いは、織田信長にとっては多くの戦のひとつでしかないが、光秀にとっては織田家仕官後初めての戦であり、後詰で大した兵士も与えられないまま、期待以上の成果を出すことで信長の信頼を得る重要な戦いであったためである。

 

 

そうして作品の最後で語られる『本能寺の変』に至る真の理由とはなんなのか。

 

 

さいごまで、十分に楽しませてくれる作品で、今後も彼の歴史小説には注目である。 了

 

 

<評価の説明>

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい