鬼門の将軍 著者:高田崇史

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

  プロット;8、ストーリー;7、描写;8、スピード感;7、ドキドキ感;6、発想:8、

  スリル;7、サスペンス;6、ドンデン;7、推理;8、感動;-、泣ける;-、切ない;-、

 

ジャンル:ミステリー、歴史、古代史

 

感想:

題名の通り、平将門をテーマに追求された作品。

 

将門というと、歴史の教科書にも載る平安時代の有名人であり 知らないものはいないような人物であるが、彼の活動域が当時の下総(現在の千葉県)であったことから、あきらかに関東でなじみの深い人物である。

 

そうして教科書では、関西の藤原純友と伴に平安時代の2代クーデター事件 承平天慶の乱として名を残している。

 

もうひとつの有名な理由が、おそらく東京皇居の真ん前、霞が関のど真ん中にある将門塚の呪いで有名になったのでないだろうか。

 

怨霊になるからには、恨みを残したままに不遇の死を遂げているという事に他ならない。

 

その恨みが大きければまた歴史的に影響力の人物であればあるほど大怨霊となるのだが、この将門は菅原道真、崇徳上皇とともに3大怨霊として名を連ねているが故、広く名が知られているのではないだろうか。

 

史実的には、桓武系の皇子が臣籍降下して下総に移り住んだ系属であるとはいえ、地方の一豪族が、同族の争いがもとで一族を壊滅合併し、最終的には関八州、すなわち関東全域を治めるや、新皇として独立を宣言する事実上のクーデターを起こすも、最期はあっけなく討伐軍に討たれ京都で晒し首になるというものである。

 

 

その後日談として、その晒された首が、全く朽ちなかったとか、夜になると笑い声がしたとか、飛んで関東に舞い戻り落ちたその場所に首塚が作られたとか、いろいろな伝説が能や歌舞伎、絵画に残され大怨霊となっているのだが、事実関係は明らかではない。

 

 

 

ここで、ずっと理解が出来なかったのは、理由如何にしろ クーデターを起こして敗れたという事実だけを見ても討たれる覚悟はあったはずで、なにに対してそこまで怨んで死んだんだろうという事だった。

 

更に、海音寺潮五郎なんかが半世紀以上昔に著しているしおそらく間違いはないのだと思うが、史実の荒々しいイメージに反して実際は非常に温厚で優しく人物であったという事である。

 

 

これだけを見ても、同じ三大怨霊である 藤原氏に陥れらえ配流され恨みを残して死んでいった右大臣 菅原道真や保元平治の乱で敗れ流された数年後に最後は舌を噛み切って死んだ天皇崇徳とは、その地位も恨みの期間も内容も異なるが故に、彼 将門が同じ土俵に列せらえている違和感もあった。

 

 

この現代の「怨霊将門」となった不思議や違和感をはじめ平将門の実像を、当作品では時に長い歴史の結果として、それこそ、過去からの政治や経済的側面も絡め、すべてを氷解してくれる。

 

 

次に東京へ出向いた際には、将門塚と神田明神にだけはお参りしてみようと、いまは考えている。 了

 

 

 

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1,404円
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<評価の説明>

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい