カンナ ~天満の葬列~ 著者:高田崇史

  ★★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

  プロット;7、ストーリー;8、描写;8、スピード感;9、ドキドキ感8、発想;8、シリーズ;有り、

  歴史謎解き;9、サスペンス;7、ドンデン;7、推理;8、感動;-、泣ける;-、切ない;6、エロ;-

ジャンル:、歴史、ミステリー

 

感想:

シリーズ全9作のうちの、当作品は第七弾となる。

 

テーマは、表題の天満からも想像できる通り、天満宮のことで 要は、天神さんこと菅原道真となる。

 

 

全国12000社ともいわれる天神さんの総本社は2社である。

 

ひとつは、知らない人はいないのではないか、大宰府天満宮である。

 

が、もうひとつは 知られているんだろうか・・・、わたしは 生まれも育ちも京都出身でそれこそチャリでいける距離にあった「北野さん」こと、北野天満宮。

 

山ほど神社仏閣がある京都人においてでさえ、特別なじみの深い神社である。

 

 

ただし、ずっと違和感があった。

 

それは、主祭神が菅原道真という 貴族であるとは言えただの人臣であるにも関わらず神として祀られていることと、もう一つは彼が怨霊であり その鎮魂の為に建てられた神社であるということ。

 

 

徐々に、彼が怨霊になった理由が、一般人で右大臣にまで上り詰めながら、政争にやぶれ大宰府に流され失望のうちに亡くなったがためだということは分かった。

 

しかし、こんな経験をした人やもっと酷い目にあった人なども歴史上には山ほどにといるだろうにと。

 

それをなぜに彼だけが取りざたされ、しかも人身でありながら神となれたのか。

 

更に言えば、彼の残したどんな句を見ても、非常に人生を達観した温厚な人物像しか浮かんでこない。

 

菅原道真が、左遷当日に家人に当てて詠った有名な句

 

    東風吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ

 

どう考えても、怨霊となる人物が詠む句とは思えない。

 

 

こんな違和感を一掃してくれる一冊となった。

 

 

もうひとつのこの作品の位置づけとして重要な点が、シリーズとして迫っている『蘇我大臣馬子傳暦』というこれは架空の社伝を巡る攻防である。

 

これも、そろそろ後半戦で佳境に入ってきた。

 

登場人物たちが、もう誰が味方で誰が敵か分からなくなり入り乱れてきて目が離せない。  了

 

 

 

 

 

 

<評価の説明>

 ★★★★★★10:超傑作、もう神の域

 ★★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

 ★★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

 ★★★7:秀作、十分に楽しめる作品

 ★★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

 ★5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

 ★4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

 ★3:失敗作、読む価値なし

 ★2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい