QED 諏訪の神霊 著者:高田崇史

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

ジャンル:歴史ミステリー、神話、諏訪大社

 

感想:

当作、シリーズの既に15作品目に当たる。

 

そのうちの、異色の「ベーカー街の問題」と「flumen」以外は、全て読み通してきた。

 

ましてや、最後の2冊は、出雲⇒伊勢神宮という、このシリーズのまさに終着地点である。

 

もうここまでくれば、面白い、面白くないという問題でではなく、読み切らざるを得ない。

 

いや、少なくともこの2テーマで、面白くないということが ありえないであろう。

 

ということで、次は異色の2作をやっつけることにする。

 

 

少々前おきが長くなったのは、当作がどちらかというと長野県諏訪市で7年に1度だけおこなわれる 「御柱祭」をテーマに謎を解く歴史ミステリーと並行して、現代で発生する殺人事件というミステリー二段構えになっている構成はいつもと同じ。

 

そうして、歴史テーマがドメスティックでマイナーな時には、現代ミステリー色が濃くなるのも もうパターン化してきた。

 

そういった意味で当作は、どちらかといえば 後者の現代ミステリー色が濃い方に属すのかと、まぁ 表題を見ただけで判断はつくわけで、実際にそれに違いはない。

 

とはいえ、だから駄作かといえば、しっかりミステリーとしても成り立っているし、またこの作家の素晴らしいところは、歴史的テーマが現在と乖離してないところなのである。

 

なので、歴史的物語を読みたい場合には少々がっかりではあるが、ミステリーを楽しむには それほど遜色ないことはまずはお伝えしておこう。

(とは言いながらも、あくまで歴史的ミステリーの謎解きを楽しみたい私にとって期待値は低いのだが)

 

 

さて、「御柱祭」について。

 

知っている人の方が少ないのではないか。

 

確かに、山の急斜面から 人が乗った巨木とともに落ちてくる 意味のわかない祭りである。

 

確かにその開催時には、ニュースには流れるし、大概はけが人が、悪い時には死亡者もでる祭りなので、見れば 「あぁ」と思い出すかもしれないが、それも7年に一度の祭りなので、記憶に残っているかどうか。

 

私自身、数年間長野県に住んでいたことがあり、また今でも仕事でたまにこの近辺に行くことがあるので、一般のヒトに比べれば比較的馴染みがある。

 

とはいえ、諏訪といえば 夏になれば青粉が発生し、冬には滅多に凍らなくなってワカサギ釣りが出来ず御神渡りが見られなくなった諏訪湖があり、観光としては ドライブウェイとして夏にはヴィーナスラインと、その次にやっと諏訪大社が上社と下社に分かれてあるなぁと、そこで御柱という田舎ながらの奇祭をやってたなぁと、そんな程度の知識しかない。

 

なので、本テーマの「御柱祭」が 表面上どういった祭りであり、その裏側に隠された本来の祭りの意味が、当初では殊更掘り下げられていく。

 

実際には、田舎神社にそれほど興味があるわけではない。

 

大概に、田舎の祭りほど、奇妙なものや外からのヒトを受けつけず、ひっそりと行われている若しくは行われていたものが多くあったんだろう。

 

それは、「祭り」がいまでこそ縁日や花火やらと団欒の一形態と 夏の風物詩然と居座っているが、そもそもが「祀り」であり、要は神様に対し敬う行事であることから、それほどの面白いものではない事から見ても間違いないのではないか。

 

そこには、7年に1度しか開催されないことにも意味はあるであろうし、いくら死人が出ようがその上にが乗っかってキケンを顧みず山から遅される巨木とともに落ちることについても意味があった筈である。

 

が、この祭りでは その意味がほとんどわかってないという。

 

それは、「諏訪大社の七不思議」として上社、下社それぞれにあり、ただし3つの不思議がだぶっているので計11もの不思議が存在していること(ネットを調べても出てくるので間違いないであろう)は、表の顔としての祭りで真の目的である祀りを覆い隠す 祭りとしては、表立って謎があること自体で異例でないだろうか。

 

別にこの七不思議をひとつひとつ解明するような馬鹿げたことはしないが、その中でも元朝の蛙狩りや高野の耳裂鹿の不思議に対してはストーリーから外れることなくさらっと解明しているし、そもそもなぜ御神木を落とすのか、その後その巨木はどうなるのか、この書ではじめて知ることになる。

 

とはいえ、それほどに興味もないので、「へぇ~」という感情以上にはならないが。。。

 

登場する神々にしても、国譲りの大物主神の諏訪まで敗走して泣きを入れて助けてもらう土着系の神 建御名方神と、勝者側で朝廷側の神の建御雷神と、このシリーズではじめて知ったくらいの微妙にマイナーな神様ではある。

 

結果、それほど知的好奇心をそそられる内容ではないのである。

 

 

要は、テーマを見た際、そもそも当巻では多くの期待をしていなかったことは間違いない。

 

が、それでも450頁を越える作品を最後まで飽きもせずに読み切らせる作者の力量には感服するしかない。

 

秀作ではあるが、当作家初読みではそれほどにお勧めできない、そんな1作である。  了

 

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい