幕末 維新の暗号 著者:加治将一

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

ジャンル:歴史、幕末、ミステリー

 

感想:

明治の1枚の群像写真、おそらく誰もがひと目は見たことがあるのではないだろうか、その写真の真贋から始まり、最後には驚くべき結論に達する。

 

おそらくひとつひとつ検証していけば、相当に怪しいトンデモ本なのかもしれない。

 

それでも多くの歴史が時の権力者により改ざんされているというのは事実であろうし、また明らかになって改定されるケースが多々あるのは事実。

 

そうやって、ゆるい気持ちで楽しんで読めば、相当に面白い近代史スペクタクルである。

 

当書には、この写真の解明という大テーマに隠れたちいさな事実が、ふんだんに散りばめられている。

 

例えば、現在の政治経済の基礎を創った大久保利通と岩倉具視の裏の顔、戊辰戦争後の内乱として各地で勃発した士族の反乱である佐賀の乱や西南戦争の本当の理由、すでに上野の銅像が本人でないことは明らかになっているがじゃあ本当の西郷さんの顔は?

 

他にも、南北朝時代と維新の関わりや、特筆すべ功績もないにも係わらずこの革命の立役者として不動の地位を占めて英雄視されているのかがよくわからない吉田松陰の果たした功績、豊臣秀吉と同じく農民から這い上がった初代総理大臣 伊藤博文の隠された立身出世物語、早稲田大学総長で総理にもなった大隈重信の野心など、上げればそれこそ暇がない。

 

へたをすれば、ひとつひとつが 1冊の作品となってもおかしくないような内容が、いとも簡単に述べられているのだが、どれもが全く違和感がない。

 

そのなかでもテーマの大きな部分を占めるのは、昨今明治維新の裏で西洋列強が指揮し、ともすれば彼らが主導となってクーデターを起こさせたとする作品が多数出版されている。

 

この作品も同じで見解をとってはいるものの、それらと少々異なるのは、巷の作品が 日本の基礎がこれら列強の意のままに操られたとするイヤミス的な結果論で終わっているのに対して、当作品は、確かにきっけや多くの指導や支援は受けたのは事実だが、最後にはそれら列強を追い出し独立した国家として自立したとする作者の結論であり、日本人として救われる思いで読了することができた。

 

なにが本当に正しいのかはよくわからない。

 

が、十分に研鑽し研究しつくされた作品であり、十分に楽しめるエンターテインメント作品であり、気持ちよく終われる 加治将一という作家、最近どうしても好きで、主観入りでの高評価となった。 了

 

★★★★★10:超傑作、もう神の域

★★★★9:最高傑作、間違いなくこれからも読み続ける珠玉の1冊

★★★8:傑作、もう一度読み返したくなる1冊

★★7:秀作、十分に楽しめる作品

★6:標準的佳作、とりあえす合格レベルの作品      

5:凡作、可もなく不可もなくで読んでも読まなくてもよいレベル

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい