隻眼の少女   著者:麻耶雄崇

書評: 本格推理

ジャンル:★★★8:傑作、もう一度読み直したい

感想:


以前に読んだ別作家の作品「メルカトル~」が、兎に角 下品で胸糞の悪くなる作品で途中で放棄して、この作家にもおなじ「メルカトル~」という作品があるために、混同してこの作家の本を読むのを避けていた。が、ひょんなきっかけで この作品間違いに気づき この作品を読むことにしてみた。


概要とすれば2部構成となっている。


第一部は、主人公で冴えない自殺を考えて鄙びた温泉宿に来た青年と隻眼の探偵少女が出会うところからスタート。


連続殺人事件に遭遇し いったんは解決を迎えるだけの話であるが、内容的にもなにかしっくりとせず、また文体筆致も読み進めづらく、面白くはない。



それが、第二部は突然18年後にぶっ飛ぶのだが、前部とすべてがガラリと変わる。


ストーリーとしては、18年前 事件解決後に自殺に失敗したものの記憶喪失になって別人と暮らしてきた主人公と新聞で事故死した名探偵となった隻眼の少女、という前提からはじまるのであるが、始めからは雰囲気がガラリと変わる。


郷愁もあり再び温泉に向かう主人公が出会うのは、瓜二つの隻眼の少女の娘。そこでまた事件が始まり。。。


後半はとにかくスピーディーで、過去と現在の問題が同時並行で進んでいく。そうして前半の違和感も徐々に払拭されていくのだが、これこそ本格推理という具合に、意識は犯人探しにやっきりになっている。


どんでん返しがあることが予測できるので、その伏線を意識して読み進めるも 結末は凌駕するはず。



奇を衒った様相は 正に現代版横溝正史で、あくまでレベルの高い本格推理小説と呼ぶにふさわしい、なっとくの1冊であった。  了




★★★★★10:超傑作、神レベル

★★★★9:最高傑作、間違いなく繰り返し読み続ける

★★★8:傑作、もう一度読み直したい

★★7:秀作、十分におもしろい

★6:標準的作品、一度くらいは読む価値あり      

5:凡作、可もなく不可もなく

4:駄作、よほど暇であれば読んでもいいが・・・

3:失敗作、読む価値なし

2:酷作、この作家の本は二度と手にも取りたくないレベル

★1:ゴミ、即破棄してもいい読むに耐えない



(文春文庫)